皮膚の構造

皮膚の構造と機能 ~機能 ①バリア機能~

皮膚の機能

皮膚の機能(働き)を知ることは
正しいスキンケアを行うためにはとても必要なことです。

皮膚には大きく分けると2つの働きがあります。

    ひとつめは、体の中の水分や熱を外に逃がさない「壁(バリア)」のような働き。
    もうひとつは、様々な外的刺激から体を守る「センサー」のような働きです。

そのほかにも皮膚は体温を調整する役割をもっていますし、
また、皮膚は弾力をもったクッションの役割をして、体の内部の筋肉や内臓などを保護しています。
このように様々な大切な機能を持った臓器なのです。

皮膚はある種の物質を吸収することはできますが
これは本来皮膚が担っている機能ではありませんので、
あまり様々な物質を吸収させようとして皮膚に無理をさせることは良いことではありません。

また意外に皮膚が呼吸していると思っている方も多いようですね。
実際にはわずかに二酸化炭素を排出していますが
呼吸しているというほどではなく、もちろん皮膚を覆っても呼吸できずに死んでしまうなんてことはありません。
美容の世界で「皮膚呼吸」と言っているのは、本当に酸素を吸って二酸化炭素を排出する「酸素呼吸」のことを指すのではなく、汗や皮脂などの分泌物がスムーズに排出されることを比喩的に言っているにすぎません。

上記のような生物学的な機能のほかにも、皮膚はヒトの外観や容貌を形成し、
文化や社会的に重要な位置を占め、他人とのコミュニケーションにおいても大切な一面をもっています。
そのため皮膚の疾患や皮膚の状態は大きな悩みやストレスを生み出し、私たちの生活に深くかかわっています。

1. 水分を逃さないバリアとしての機能

水分を逃さないバリアとしての機能は、皮膚のもっとも重要な機能と言っても良いのではないでしょうか。
この機能を担っているのは表皮、特に角質層ですが、皮膚の表面に分泌される皮脂や表皮の他の細胞の間にも重要なバリア機能は存在します。
スキンケアの基本はこれらのバリア機能を健全に保つことにあると言っても過言ではありません。

皮脂のもつバリア機能
皮脂は皮脂腺から分泌される脂質ですが、主な成分はスクワレン、ワックスエステル、トリグリセリドなどです。
皮脂の量は、皮脂腺内の脂腺細胞の増殖と分化の度合いに左右され、それは男性ホルモンなどの内分泌因子によって制御されています。
皮脂は脂質(油分)によって皮膚の表面を覆い、皮膚を保護するとともに水分の蒸散を防いでいます。
しかし、皮膚の水分保持に関して、他の天然保湿因子やセラミドなどの角質細胞間脂質に比べると、皮脂の寄与は少ないと言われています。
しかし、皮膚の表面のpHは弱酸性(およそpH4~6)と言われており、皮脂のトリグリセリドが皮膚表面の常在菌などによって分解されて放出される脂肪酸が皮膚のpHを弱酸性に保つために重要な役割を果たしています。
そして皮膚が弱酸性に保たれることによって、異常な菌の増殖を抑え、皮膚が健康で正常な状態に保たれています。

天然保湿因子のもつバリア機能
角質層の水分は主に天然保湿因子と呼ばれる水と結びつきやすい水溶性の低分子成分に結合しています。
この天然保湿因子はNMF(natural moisturizing factor)と略されます。
NMFは、遊離アミノ酸、ピロリドンカルボン酸、乳酸、尿素、ミネラルなどが主な成分ですが、アミノ酸の占める割合が多く、とても重要です。
顆粒層のケラチノサイト(顆粒細胞)のケラトヒアリン顆粒に存在するプロフィラグリンはフィラグリンというタンパク質に変換され、角質層中では徐々に分解されて遊離アミノ酸になります。これらのアミノ酸やグルタミン酸(アミノ酸の一種)の代謝産物であるピロリドンカルボン酸が角質層で天然保湿因子として水分保持に重要な役割を果たします。
フィラグリンの異常は、アトピー性皮膚炎の重要な発症因子でもあるので、バリア機能にはとても大切な因子です。

角質層の模式図

図1-3 角質層の模式図

角質細胞間脂質のもつバリア機能
角質細胞間脂質は、セラミド、コレステロール、脂肪酸などが主体であり、角質細胞間にラメラ構造という層状の構造を形成して、バリア機能維持に必要な要素となっています。
これらの重量比はおよそセラミドが40~60%、コレステロールが20~30%、脂肪酸が20~30%です。
セラミドは角質層のバリア機能に欠かせない存在ですが、その構造からセラミド1、セラミド2などと数字が付けられて呼ばれてきました。当初は6種類が知られていましたが、その後の研究で次々と新たなセラミドが発見され、今では11種類のタイプがヒトの皮膚中に確認されています。
セラミドはスフィンゴイド塩基と脂肪酸の結合した構造をしています。

セラミドの代表的な構造

図1-4 セラミドの代表的な構造


セラミドを構成するスフィンゴイド塩基には4種類あり、また脂肪酸は大きく分けて3種類があります。
そのため4X3で12種類が理論的には考えられるのですが、ヒトの皮膚中には今のところ11種類の存在が確認されています。また脂肪酸については、その炭素数の違いから数多くのバリエーションが存在しており、バリア機能に大切なセラミドの脂肪酸は比較的炭素数の多いものが主となっています。

最近では、その呼び方もセラミド1やセラミド2といった呼び方から、セラミドEOP(セラミド1)、セラミドNS(セラミド2)といった呼び方に変わりつつあります。※現在のところ、化粧品に用いられる成分名称では、まだセラミド1、セラミド2といった呼び方が主流です。

セラミドの構造と名称

図1-5 セラミドの構造と名称。セラミドはその構造からスフィンゴイド塩基と脂肪酸の組み合わせで分類されています。色を付けたところはヒトの皮膚でも確認されているセラミドです。スフィンゲニンはスフィンゴシンとも言います。また4-ヒドロキシスフィンガニンはフィトスフィンゴシンとも言います。スフィンガニンはジヒドロスフィンゴシン、6-ヒドロキシスフィンゲニンはヒドロキシスフィンゴシンとも言います。



※セラミド1をセラミドEOSと表記しておりましたが、正しくはセラミドEOPでした。参考にした書籍が間違っておりました。大変申し訳ありません。お詫びして訂正いたします。またセラミド2につきましては、化粧品の表示名称ではセラミドNDS,セラミドNSの両方に相当します。なお、化粧品の表示名称ではNDSは使用されておらず、セラミドNGと登録されています。(平成28年7月13日現在)。※追記:色々な文献を見たところ、学術的にはセラミド1はセラミドEOSのようです。なぜか化粧品の表示名称ではセラミド1はセラミドEOPとなっています(スフィンゴイド部分がフィトスフィンゴシン)。学術論文と化粧品の表示名称は別物と考えたほうが良いのでしょうか。(平成28年7月25日)


角質細胞間脂質は、その疎水性の領域を向い合せにしたシート状の構造を形成し、そのシートが幾重にも重なって層状の構造(ラメラ構造)を形成しています。このラメラ構造は、疎水性領域と親水性領域が交互に層状に重なっているので、水溶性の物質も油溶性の物質も通しにくくなっています。そのため水分が体の外にでるのを防ぐだけでなく、外部から化学物質や細菌などの侵入を防ぐことができます。

アトピー肌の方や敏感肌の方の場合には、この細胞間脂質によるバリア機能が壊れ、水分の喪失や化学物質などの侵入が容易になってしまっており、そのため乾燥や刺激に過敏になっています。このような刺激は角質の異常角化を招き、ニキビや毛穴の開き、敏感肌や色素の沈着、シワ、シミなど様々な皮膚のトラブルへとつながっていきます。
そのため、スキンケアにおいては、この細胞間脂質が最も大切な要素となっています。

その他のバリア機能
その他にも表皮では、細胞間を密着させることで水分等の出入りを防いでバリアを形成しています。
例えば、角質層の下部にある顆粒層では、タイトジャンクションと呼ばれるタンパク質の構造体がO-リングのように細胞と細胞の間を埋め、バリア機能を形成しています。それによって細胞の間隙から水分が透過していくのを防いでいます。

タイトジャンクション

図1-6 表皮中のタイトジャンクション(模式図)