皮膚の構造と機能 ~②防御機能~

2. 様々な外的刺激から体を守る機能

皮膚の大切な働きのひとつ、物理的なバリア機能で
私たちの体の内部を乾燥や異物の混入などから守っていることを説明しました。
次にもうひとつの大切な働き、センサーのような
様々な外的刺激から体を守る働きについて説明します。

免疫によって体を守る機能
皮膚は物理的なバリアによって外界の微生物や様々な物質などが体内に侵入するのを防いでいます。
皮膚の表面では常在菌が存在し、一種の平衡状態を保って共存しています。
しかし、これらの平衡が崩れるなどして、微生物が体内に侵入し、危害を加えるようになると、
免疫システムが作動して微生物などを排除し、生体を守ります。

免疫システムでは、侵入してきた細菌やウイルスなどの微生物や細胞、
タンパク質などのターゲットが自己か非自己かを認識します。
本来、免疫システムが認識できるのはタンパク質です。
細菌やウイルス、細胞などの場合には、その表面にあるタンパク質を認識します。
また食品など、たとえば小麦や蕎麦などは、
含まれているタンパク質(たとえばグルテンなど)を認識します。
ある程度大きな分子量のものしか認識できないので
タンパク質と同じくアミノ酸で構成されていてもペプチドは免疫システムでは認識できません。
※タンパク質もペプチドも同じくアミノ酸で構成されていますが、アミノ酸が100個以上のものをタンパク質、それ以下のものはペプチドと呼ばれています。
したがって、一般的には分子量が大きくても糖類などは認識されませんし、低分子の物質も認識できません。
しかし、まれに体内に侵入し、体内のタンパク質と結合することで認識されるようになるものがあります。
このような物質をハプテンと呼びますが、分子量が小さくてもアレルギーを起こすような薬剤や金属アレルギーなどがその例です。

ハプテン

ハプテンはそれ単独では抗原として認識されない低分子の物質ですが、体内でタンパク質などの大きな分子と結合することで抗原として認識されます。

非自己として認識された細胞やタンパク質は、皮膚においてはランゲルハンス細胞や
マクロファージなどの免疫を担当する細胞に食べられます(貪食と呼びます)。
貪食された物質の情報はT細胞という免疫系の細胞に伝わり、
その後の抗体の産生などの免疫反応が起こります。

アレルギー反応
そのように生体には非自己を排除するための「免疫」システムが備わっていますが、ときとして過剰に働き、自分自身の器官や組織を壊すなどの症状を引き起こすことがあります。この免疫の異常反応によって起こるのがいわゆる「アレルギー」です。アレルギーは主に次の4つのタイプに大別されます。主に皮膚で化粧品が関係しているのは主にⅠ型とⅣ型ですね。

  1. Ⅰ型(即時型)
    IgE抗体がマスト細胞に結合し、ヒスタミンなどを放出して毛細血管の拡張や平滑筋の収縮、血管収縮などを引き起こす。一般的なアレルギー反応、アナフィラキシー、喘息など。
    通常は15分でピークとなる膨疹、紅斑
  2. Ⅱ型(細胞毒性型)
    細胞やタンパク質にIgGやIgM抗体が結合し、補体が活性化され、細胞融解やマクロファージによる貪食、リンパ球による細胞傷害などが生じる。
  3. Ⅲ型(免疫複合体型)
    抗原と抗体の結合した複合体が組織に沈着して補体が活性化され、好中球の集積や血小板の凝集が誘導され生じる反応。2~8時間程度で炎症が惹起される。
  4. Ⅳ型(遅延型、細胞免疫型)
    抗原と反応したT細胞と、活性化したT細胞が遊離した物質によって集まったマクロファージや細胞傷害性T細胞が主体となっておこる炎症反応。抗体は関与しない。接触皮膚炎が代表例で、24~48時間で反応がピークになる。

免疫にかかわる細胞
免疫にかかわる細胞は、一般的には(体全体では)T細胞、B細胞、組織球(マクロファージ)、
肥満(マスト)細胞、好酸球、好中球、好塩基球などがありますが、
皮膚においてはさらにランゲルハンス細胞、角化細胞(ケラチノサイト)、
真皮樹状細胞などがあります。

  1. T細胞はヘルパーT細胞(Th)と細胞傷害性T細胞(Tc)とに大別されます。
    ヘルパーT細胞は、分化してTh1とTh2に分かれていきますが、
    Th1はマクロファージなどの細胞性免疫を活性化し、Th2はB細胞を活性化して抗体を産生します。
    おもにTh1はⅣ型のアレルギー(アレルギー性の接触皮膚炎など)に、
    Th2はI型のアレルギー(アトピー性皮膚炎など)に関与していると言われています。
    このTh1とTh2のバランスはとても大切で、バランスが崩れると
    免疫系の疾患になってしまうと考えられています。
    たとえばTh2のバランスが優位になってしまうとアトピー性皮膚炎などの
    アレルギー性疾患が生じてしまいます。
    また皮膚表面の外来性のプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)は、Th2系を活性化し、
    アレルギーへの感作を誘導してしまうそうです。
  2. Th1/Th2バランス

    Th1/Th2バランスが崩れてTh2優位になるとアレルギーを発症すると考えられています。自然免疫は獲得免疫の活性化にとても重要で、またTh1/Th2バランス制御にも関わっています。乳幼児期に感染機会が減少し、環境中のLPS(グラム陰性菌の菌体成分の一種)の減少により自然免疫が抑制され、Th2優位になり、そのことがアレルギー発症の誘因になっていると考えられています。

  3. B細胞は抗体を分泌し、免疫の中心的役割を果たしています。
    抗体にはIgM、IgG、IgA、IgD、IgEの5種類があります。
    抗体は2本のH鎖と2本のL鎖が結合して形成されています。
    また抗体にはV(可変)領域とC(定常)領域と呼ばれる領域があり、
    V領域は抗原への結合の多様性を担っている領域で
    C領域は抗体の種類や機能を規定している領域になります。
    またB細胞は抗体の産生以外にもサイトカイン産生や抗原提示などの機能によって
    アレルギー・免疫疾患に関与しています。
    たとえば接触皮膚炎(IV型アレルギー)に対してIL-10というサイトカインを産生することで
    過敏反応を抑制していることがわかっています。
  4. ランゲルハンス細胞は、骨髄由来の樹状細胞で、表皮基底細胞上に常在しています。外界からの異物を見張る働きをもっており、異物を見つけると、前述の通り、細胞内にとりこんで(貪食)分解してしまいます。
    そしてその物質の情報をT細胞などに伝え、全身の免疫系を活性化します。
  5. 角化細胞(ケラチノサイト)は表皮の大部分を占める細胞ですが、皮膚のバリア機能を担っています。そのバリアは物理的なバリアだけでなく、化学的・免疫学的にもバリア機能を発揮しています。
    ケラチノサイトが異物によって傷つけられたり、バリア機能が低下すると様々なサイトカインという物質を放出して真皮内のリンパ球やマクロファージなどの免疫系を活性化し炎症反応を引き起こします。
    またケラチノサイトは様々な抗菌ペプチドを産生することにより、感染防御機能を発揮しています。
  6. マスト細胞は骨髄由来の前駆細胞が末梢組織(皮膚など)に入り、そこで分化・成熟します。ヒトのマスト細胞の増殖・分化・成熟にはstem cell factor(SCF)、IL-4、IL-6が関与しています。マスト細胞表面に結合したIgEとアレルゲンが結合し架橋されるとマスト細胞は活性化され、脱顆粒が生じてヒスタミンなどのメディエーターが放出されます。皮膚アレルギーに関連するこれらの炎症メディエーターは、血管透過性の亢進や痒み刺激(ヒスタミン)、線維芽細胞のコラーゲン合成促進(ヒスタミン、トリプターゼ)、膨疹の惹起(脂質メディエーター)、Th2細胞や好酸球などの他の炎症細胞の局所への遊走(ケモカイン)などに関係しています。
  7. マクロファージは全身に分布している貪食細胞です。主には菌や異物の処理を行い、またサイトカインや化学伝達物質を産生して、Tリンパ球の遊出、活性化、血管新生・透過性亢進などを介して遅延型アレルギー反応をはじめとする免疫アレルギー反応や創傷治癒、腫瘍免疫など多岐にわたって機能を発揮しています。
    マクロファージはM1マクロファージとM2マクロファージに分類されますが、M1マクロファージはIL-12を産生するのが特徴でその他にもサイトカインなどを分泌して病原体や腫瘍の処理やTh1細胞の遊走、分化を誘導します。またM2マクロファージはIL-10を産生するのが特徴で、組織修復、血管新生に関与し、免疫抑制に作用します。

このように、皮膚は外界の異物、細菌やウイルス、カビなどの微生物や
花粉、化学物質、大気汚染物質などに対して、いち早く発見し、
対処するようなとても重要な免疫センサーの役割を担っています。