皮膚の構造と機能 ~構造~

皮膚の構造と機能 ~構造~


私たちが皮膚を健康で美しい状態に保つためには、
皮膚の構造と機能(働き)を理解しておく必要があります。
なぜなら皮膚の構造と機能を無視したスキンケアをしてしまうと
皮膚への負担が増え、きれいになるどころか、皮膚が弱ってしまい
皮膚が荒れてボロボロになってしまうからです。

皮膚の構造

皮膚は私たちの体の外側を覆い、保護しているだけのものだと
思っている方も多いかもしれませんね。
実は、皮膚は「最も大きな臓器」と言われるくらいとても重要で、
大きな割合を占める臓器なのです。
面積でいうと成人の皮膚は約1.6m2(畳1枚分)で
重さも約3kg(皮下組織を含めると約9kg)もあります。
皮膚の厚さは部位によって異なりますが、最も厚いところで約4mm、
薄いところでは1.5mm程度しかありません。
皮膚は大きく分けると、表面から順に、表皮、真皮、皮下組織と分類されています。
また付属器官として、脂腺(皮脂腺)、汗腺、毛、爪などがあります。

1. 表皮

表皮は最も外側に位置しており、外界との接点になっています。厚さはわずか0.06~0.2mm程度しかありません。
表皮は角層を含めてほとんどがケラチノサイト(表皮角化細胞)という細胞によって構成されています。ケラチノサイトのほかにはメラノサイトというメラニン色素をつくる細胞やランゲルハンス細胞という免疫の機能を担っている細胞も存在しています。
表皮の面白いところは、ケラチノサイトが表皮の一番底の部分(基底層)で細胞分裂をして増殖し、だんだんと表面に向かって押し出される間に形態や性質を変化させ、分化しながら移動することです。

表皮は図1-1にあるように、もっとも深い位置の基底層から順に有棘層、顆粒層、角質層と呼ばれる層を形成しています。
基底層にあるケラチノサイトは基底細胞と呼ばれ、有棘層のケラチノサイトは有棘細胞、顆粒層では顆粒細胞、角質層(角層)では角質細胞と呼ばれています。

基底層:表皮の最下層で、1層の細胞からなります。約20日ごとに分裂して、2個に分かれた細胞のうち1個は上昇して有棘細胞へと分化します。残る1個がまた分裂します。

有棘層:5~10層の細胞からなり、上昇しながらだんだんと扁平化していきます。細胞同士が細胞間橋とよばれる構造でつながっているように見え、そのため棘のようにみえるので有棘細胞と呼ばれるようになりました。

顆粒層:2~3層の細胞からなり、さらに扁平化した細胞です。
ケラトヒアリン顆粒や層板顆粒を含んでおり、ケラトヒアリン顆粒は天然保湿因子(NMF)のもととなるフィラグリンを生じ、また層板顆粒からは保湿に重要なセラミドが放出されます。また細胞間にはタイトジャンクションという構造が存在し、細胞と細胞の間をシールで接着するような構造で、外来物質の侵入を防ぐバリア機能としても働きます。皮膚のバリア機能の形成にとって大変重要な細胞です。

角質層(角層):最も外側に位置する細胞層で、すでに核が抜け落ちて死んでしまった抜け殻のような構造です。角質細胞の内部は周辺帯(コーニファイド・エンベロープ)という固いタンパク質の殻と、天然保湿因子(NMF)と呼ばれるアミノ酸などの保湿成分、細胞間はセラミドなどの角質細胞間脂質などで構成されており、強固なバリア機能を形成しています。

その他の細胞

メラノサイト(色素細胞):メラニン色素を産生する細胞で、メラニンによって紫外線を防御し、紫外線障害や皮膚がんの発生を防ぎます。基底層に存在し、基底細胞36個に対してメラノサイト1個くらいの割合で存在しています。皮膚1mm2あたり約1,000~1,500個のメラノサイトがあり、数と分布には人種による差異はありませんが、黒人は白人に比べてメラノサイトが発達しており、メラニンの産生能が高いことが知られています。

ランゲルハンス細胞:骨髄由来で免疫を担当する細胞です。有棘層の中層から上層に存在します。リンパ球に対して抗原提示作用をもちます。

メルケル細胞:基底層に存在して触角を司る細胞です。物理的刺激を受けるとメルケル細胞顆粒から神経伝達物質が分泌されて知覚神経へ情報が伝達されます。

皮膚の構造

図1-1  皮膚の構造(模式図)

 
2. 真皮

真皮は表皮の下にあり、体重の10~15%を占める巨大な器官です。
真皮は膠原繊維(コラーゲン)を多量に含む厚い組織で、表皮の約40倍の厚さがあり、部位によって異なりますが、厚い背中では5mm、薄い瞼では1mm程度です。
表皮との間に食い込んでいる部分(乳頭層といいます)には毛細血管や知覚神経終末が存在しています。
その下は細胞外マトリックスが主成分です。細胞外マトリックスは細胞や線維の間を満たすゲル状の成分(基質)や繊維成分からなっています。線維成分の大部分がコラーゲンで、非常に強靭な線維で伸展に強く皮膚を支持します。コラーゲンのほかには弾性線維(エラスチン)があり、強靭さはありませんが弾力性に富んでいます。
基質はヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンやプロテオグリカン、糖タンパク質などからなり、水分保持や線維成分の安定化を担っています。

真皮には、線維芽細胞やマクロファージ、肥満細胞、形質細胞などの細胞が存在しています。
線維芽細胞はコラーゲンやエラスチンなどの線維成分を産生する細胞です。
マクロファージや肥満細胞、形質細胞は免疫に関係しており、肥満細胞はアレルギーに関係しています。

真皮で大切なことは、コラーゲンなどの皮膚の弾力を担っている成分が作られる大切な場所であることと、免疫に関係している細胞が多数存在していることです。
また、構造からみてもわかるように、真皮には血管が通っていますので、真皮に必要な栄養分はどちらかというと化粧品よりも食品から摂る方が早く効果的であると言えます。
※化粧品からも毛穴などを通してわずかながら真皮まで届くことはありますので、化粧品が全く無意味ということではありません。
また通常、神経線維は真皮に存在しています。しかし、敏感肌の方の場合には表皮まで侵入して伸びていることがあり、そのため過敏になってしまいます。

毛髪の構造

図1-2  皮膚と毛髪(模式図)

 
3. 皮膚の付属器官

脂腺(皮脂腺)
脂腺は手のひらや足の裏を除いたほぼ全身の皮膚に分布します。
毛器官がある部位には必ず付随しており、毛孔から皮表に皮脂を分泌します。
脂腺は、皮膚面積に対して脂腺の多い頭部で約800個/cm2、前額部で約400個/cm2、背中で約160個/cm2、手足には少なく約50個/cm2の密度で分布しています。
脂腺の多いところはニキビになりやすく、手のひらや足の裏には脂腺がないので、ほとんどニキビはできません。