前回は、肌のバリア機能を「レンガとモルタル」に例えてご紹介しました。今回はその「レンガ」部分、角質細胞をつくる過程で生まれる縁の下の力持ち、フィラグリンについてお話しします。あまり聞き慣れない名前かもしれませんが、実は肌のうるおいを支える、とても重要な存在です。

今回のポイント
フィラグリンは、肌の内部でつくられるタンパク質です。角質細胞の形を整える働きと、分解されてうるおい成分になる働きの2つの役割を持っています。ビタミンDは、このフィラグリンをつくる遺伝子のスイッチに直接働きかけていると考えられています。
フィラグリンとは何か——「縁の下の力持ち」
フィラグリンという名前は、英語の「filament-aggregating protein(フィラメントを束ねるタンパク質)」に由来します。肌の細胞(角化細胞:ケラチノサイト)が成熟していく過程で、まず「プロフィラグリン」という大きな前駆体としてつくられ、肌の顆粒層(かりゅうそう)という層にいったん蓄えられます。
そして、細胞が角質細胞へと生まれ変わるタイミングで、プロフィラグリンは分解され、働く形の「フィラグリン」へと姿を変えます。見えないところで着実に準備が進められている、まさに縁の下の力持ちのような存在です。
フィラグリンの2つの仕事——壁になり、うるおいになる
フィラグリンには、時期によって役割が変わるという面白い特徴があります。
■ 前半の仕事:骨格をつくる
細胞の中にあるケラチンという線維状のタンパク質を束ねて、角質細胞を薄く平らな形に変えます。この形の変化が、すきまの少ない丈夫な壁づくりにつながると考えられています。
■ 後半の仕事:うるおいになる
角質化が完了すると、フィラグリンは酵素によって分解され、アミノ酸やPCA(ピロリドンカルボン酸)などの成分に変わります。これらは「天然保湿因子(NMF)」と呼ばれ、角質層の中で水分を抱え込む役割を担っていると考えられています。
形をつくる材料として働いたあと、最後はうるおいの成分に変わる——フィラグリンは、いわば一人二役をこなしているタンパク質なのです。
ビタミンDがフィラグリンのスイッチを押す仕組み
ここで、ビタミンDの出番です。肌の細胞は、活性型ビタミンDを受け取る「VDR(ビタミンD受容体)」という受け皿を持っています。活性型ビタミンDがVDRと結びつくと、フィラグリンの遺伝子に直接はたらきかけ、フィラグリンをつくる指令(mRNA)が増えると考えられています。
つまりビタミンDは、単に材料のひとつというより、フィラグリンをつくる「スイッチ」そのものに関わっているという点が特徴的です。
近年の研究では、ビタミンDが不足すると、遺伝的な要因がなくてもフィラグリンの量が減少する傾向が報告されています。反対に、ビタミンDを補うとフィラグリンの発現が回復したという報告も複数あり、肌のうるおいを考える上でビタミンDが注目されている理由のひとつになっています。
肌がゆらぎやすい方の中には、このフィラグリンの働きが低下しやすい方が一定数いると考えられています。ビタミンDは、そうした肌の「うるおいをつくる力」そのものを底上げするサポート役として位置づけられそうです。

次回予告
次回は、「レンガとモルタル」モデルのモルタル部分の主役「セラミド」とビタミンDの関係に迫ります。ビタミンDが関わる3つの酵素の働きから、肌の脂質バリアがどのように整えられていくのかをご紹介します。


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