前回は、感染時に肌が自分でビタミンDを活性化する「緊急システム」についてご紹介しました。
ビタミンDには、こうして外敵から守る力を後押しする一面がある一方で、免疫の暴走にブレーキをかけるという、正反対にも見える役割もあると考えられています。
今回は、この「守る力は上げて、行きすぎは抑える」という、ビタミンDの絶妙なバランス感覚についてやさしく解説していきます。

強すぎる免疫は、自分の肌を傷つけてしまうこともあります。
ビタミンDは、その“さじ加減”を整える方向に働きかけると考えられているんですよ。
ビタミンDの免疫への働きかけは、大きく2つの方向があると考えられています。
・病原体から守る「自然免疫」は後押しする方向(前回までのお話)
・行きすぎた「炎症」にはブレーキをかける方向(今回のお話)
この「上げる」と「抑える」を両立させる調整役として、ビタミンDが免疫の司令塔や、炎症を伝える物質に働きかけていると報告されています。
免疫の「司令塔」をなだめるビタミンD
肌には、「樹状細胞(じゅじょうさいぼう)」と呼ばれる免疫の司令塔のような細胞がいます。
この細胞は、外から入ってきた異物の情報を「T細胞」という部隊に伝え、免疫の反応をスタートさせる役割を担っていると考えられています。
いわば、戦いの号令をかける指揮官のような存在です。
ビタミンDは、この司令塔が過剰に“戦闘モード”へ切り替わるのをおだやかにすると報告されています。
司令塔が落ち着いた状態にとどまることで、T細胞が必要以上に活性化されにくくなり、免疫が暴走しにくい環境が整うと考えられています。
さらにビタミンDは、免疫のブレーキ役として知られる「制御性T細胞(Treg)」を増やす方向にも働きかけると報告されています。アクセルをふかしすぎないよう、ブレーキ役をきちんと育てる——そんなイメージです。
炎症の「方向」を整える——T細胞のバランス
T細胞は、体を守る免疫の「実働部隊」のような存在です。外から入ってきた異物を攻撃したり、ほかの免疫細胞に指示を出したりと、役割ごとにいくつかのタイプに分かれています。なかには炎症を強める役、しずめる役もいて、このバランスが肌の調子と深く関わっていると考えられています。
免疫の主力であるT細胞には、いくつかのタイプがあり、それぞれ役割が異なります。
なかでも炎症を強く引き起こすタイプ(Th1やTh17と呼ばれます)が過剰になると、肌の赤みやかゆみといったトラブルにつながりやすいと考えられています。
ビタミンDは、この炎症を引き起こすタイプがふえすぎるのを抑え、代わりにバランスを保つタイプを支える方向に働きかけると報告されています。
加えて、炎症を伝える物質(IL-6やTNF-αなどのサイトカイン)を抑え、炎症をしずめる物質(IL-10)を後押しするという報告もあります。
つまりビタミンDは、免疫を「止める」のではなく、炎症が行きすぎないよう“向き”をやさしく整えていると考えられているのです。
肌トラブルとの関わり——研究からわかってきたこと
この免疫バランスへの働きかけは、いくつかの肌の状態とも関わりがあると報告されています。
たとえばアトピー性皮膚炎では、特定のタイプの免疫反応が過剰になっていることが知られており、ビタミンDがそのかたよりを整える方向に関わる可能性が研究されています。
ビタミンDを補うことで皮膚の状態を示すスコアが改善したという報告もあります。
また乾癬(かんせん)という肌の状態では、先ほどの「炎症を引き起こすタイプ(Th17)」が主役になっていることが知られています。
実際、ビタミンDから作られた成分(ビタミンD誘導体)が、乾癬の外用薬の代表的な選択肢のひとつとして使われていると報告されています。炎症を伝える物質を抑え、肌のターンオーバーを整える方向にはたらくことが、その根拠のひとつと考えられています。
さらに、傷ついた肌が修復されていく過程でも、ビタミンDは炎症の段階から修復の段階へと切り替わるのを後押しすると考えられており、免疫の「調整役」としての幅広い可能性が注目されています。

次回は、こうしたはたらきが「敏感肌」とどうつながっているのかを、3つの要因に分けて見ていきましょう。
次回・第8回は「敏感肌とビタミンD——3つの要因の関係」。
敏感肌は、じつは“肌が薄い”だけの状態ではないと考えられています。
物理的なバリア・神経の感じやすさ・免疫の調整という3つの層から、敏感肌とビタミンDのつながりをひもといていきます。
より詳しい専門的な解説をお読みになりたい方は、こちらの専門家コラムもあわせてご覧ください。
▶ 専門家コラム:ビタミンDと皮膚(監修コラム)



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