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セラミドとビタミンD―3つの酵素を通じた深い関係

セラミドとビタミンDー3つの酵素を通じた深い関係皮膚科学

前回は、肌の「レンガとモルタル」構造のうち、レンガである角質細胞をやわらかく整えるフィラグリンのお話をしました。今回はいよいよ、モルタル部分の主役セラミドについてです。セラミドは、肌のうるおいを守る脂質バリアの約半分を占めるとされる、とても重要な存在。乾燥やゆらぎを感じやすい肌では、このセラミドが減っていることも多いと言われています。そして実は、ビタミンDはこのセラミドがつくられる過程にも、深く関わっていると考えられています。

医学博士
医学博士
セラミドと聞くと「保湿成分」というイメージが強いかもしれませんね。でも今日お伝えしたいのは、肌が自らセラミドを「つくり出す力」の話です。その力に、ビタミンDが静かに関わっているんです。
今回のポイント

・肌のバリア機能は「レンガ(角質細胞)とモルタル(細胞間脂質)」の構造でできている
・モルタル部分の主成分がセラミドで、水分の蒸発を防ぎ、外部刺激から肌を守っている
・セラミドをつくる工程には複数の酵素が関わっており、ビタミンDはその働きを助けていると考えられている

セラミドという「うるおいの層状構造」

セラミド(スフィンゴ脂質の一種)は、コレステロールや脂肪酸とともに、角質層の中で規則正しい層状構造をつくっています。これは「ラメラ構造」と呼ばれ、何重にも重なった層状のミルフィーユのようなイメージです。前回お話しした「レンガ(角質細胞)」の隙間を、このラメラ構造がすき間なく埋めていくことで、はじめてバリアとしての形と機能が完成すると考えられています。この層状の構造がきちんと整っていることで、肌内部の水分をしっかり抱え込み、経皮水分喪失(皮膚の表面から水分が蒸発してしまうこと)を防ぐことができると言われています。同時に、外からのアレルゲンや刺激物、雑菌などの侵入をブロックする役割も担っています。つまりセラミドは、うるおいを「閉じ込める」と「守る」の両方を担う、縁の下の力持ちのような脂質なのです。

ビタミンDが働きかける3つの酵素

セラミドはお肌の中で作られるとき、ひとつの反応で一気に完成するわけではありません。肌の中でいくつかの酵素がバトンをつなぐように働き、少しずつかたちを変えながらつくられていきます。近年の研究では、ビタミンDがこのリレーに関わる複数の酵素の働きを高める方向に作用する可能性が指摘されています。どのあたりに関わっているのか、順番に見てみましょう。

①セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)
セラミド合成の出発点となる酵素です。ビタミンDはこの酵素の発現を高め、セラミドづくり全体の土台を支えていると考えられています。

②グルコセレブロシダーゼ(GCase)
つくられたセラミドの前駆体を、働けるかたちのセラミドへと変換する酵素です。いわば「仕上げ」を担当する存在で、ビタミンDがこの変換を後押しする可能性が示唆されています。

③スフィンゴミエリナーゼ(SMase)
細胞膜の成分からセラミドを取り出す、もうひとつの合成ルートを担う酵素です。この酵素の働きも、ビタミンDによって促されると考えられています。

ひとつの酵素だけでなく、複数の経路に同時に働きかけている可能性がある点が、ビタミンDとセラミドの関係を考えるうえで興味深いところです。

セラミドが足りないと、肌に何が起こるのか

セラミドの産生が十分でないと、ラメラ構造の網目が粗くなり、肌の水分喪失が増えて乾燥しやすくなります。さらに、外部刺激やアレルゲンが侵入しやすくなることで、肌が敏感な状態に傾きやすくなるとも言われています。実際に、乾燥肌やアトピー性皮膚炎の肌では、セラミドの量が有意に少ないという報告があります。ビタミンDが不足すると、①〜③の酵素の働きが十分に発揮されず、セラミド合成が滞ってしまう可能性がある——これが、「ビタミンD不足はバリア機能の低下につながりやすい」と言われる理由のひとつと考えられています。

前回お伝えしたフィラグリン(レンガを整える力)と、今回のセラミド(モルタルを満たす力)。この両方にビタミンDが関わっているという点に、ひとつの栄養素の奥深さを感じていただけたら嬉しいです。日々の食事や適度な日光浴でビタミンDを確保しておくことは、肌が自らうるおいバリアを整えようとする働きを、内側からそっと支えることにつながるのかもしれません。

医学博士
医学博士
レンガもモルタルも、材料をそろえるだけでは十分ではありません。次回は、肌がもうひとつ持っている「自前の守り」——外からの菌やウイルスと戦う仕組みと、ビタミンDの関係についてお話ししますね。
次回予告

第5回では、肌に備わった「自前の抗生物質」とも呼ばれる抗菌ペプチドについて。ビタミンDが、肌を感染から守る仕組みにどう関わっているのかをご紹介します。