前回は、肌が自ら作り出す抗菌ペプチドという「自前の抗生物質」についてご紹介しました。
実はこの抗菌ペプチドがすばやく働く裏には、肌の中で素早くビタミンDを活性化するしくみが関わっていると考えられています。
今回は、細菌やウイルスが肌に近づいたときに作動する、この「肌だけで完結する緊急システム」についてやさしく解説していきます。

でも実は、肌の中には感染のサインを受け取った瞬間だけ動き出す、もうひとつの仕組みがあると考えられているんです。
ビタミンDが活性型に変わるまでには、いくつかの工程があると考えられています。
・日光を浴びてから最初の工程(肝臓での変換)までは、どちらのルートでも共通しています
・そこから先、通常は腎臓を経て活性型になりますが、感染時には腎臓を介さず、肌の中だけで最後の工程が完了するしくみがあると考えられています
このとき、すでに体にストックされている材料(活性化前のビタミンD)が使われる点もポイントです。
このスイッチ役になっていると考えられているのが、肌にそなわった「見張りセンサー」です。
経路の違いを整理してみましょう——「ビタミンD活性化の工程」がどこで起きるか
ビタミンDが体の中で活性型に変わるまでには、いくつかの工程があります。
日光を浴びて肌で作られたビタミンDは、まず肝臓に運ばれて一段階の変換をうけます。
そのあと、二段階の変換をうけて活性型のビタミンDになります。
この「二段階めの変換工程」に2通りあるとされています。
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- ひとつめは、材料(ビタミンD)が血液を通じて腎臓まで運ばれ、そこで活性型に変換されて全身に届けられるルート。
骨の健康など、体全体のためのゆっくりとした仕組みと考えられています。 - ふたつめは、材料(ビタミンD)が腎臓まで運ばれずに、肌の中だけで最後の変換が完了するルート。
ケラチノサイト(表皮の主要な細胞)自身が、血液中にストックされている材料(ビタミンD)を活性型に変える力を持っていると考えられており、これは「必要な場所で、必要な分だけ」働く即応システムといえます。
- ひとつめは、材料(ビタミンD)が血液を通じて腎臓まで運ばれ、そこで活性型に変換されて全身に届けられるルート。
侵入者を感知する、肌の「見張りセンサー」
この2つめの肌という局所的なルートのきっかけになると考えられているのが、肌にそなわった見張りセンサーです(専門的には「TLR(トル様受容体)」と呼ばれています)。
細菌やウイルスが肌に近づいたときに、その特徴をいち早く察知する役割を担っていると考えられています。
このセンサーが病原体の侵入を感知すると、その信号が肌の細胞に伝わり、活性化のスイッチが入ると報告されています。
すると、血液中にストックされていた材料(活性化前のビタミンD)が、その場で一気に活性型のビタミンDへと変換されると考えられています。
活性化されたビタミンDは、前回ご紹介したカテリシジン(LL-37)などの抗菌ペプチドの産生をさらに後押しすると考えられています。
「察知する→スイッチが入る→守る」という一連の流れが、日光にも腎臓にも頼らずに、肌の中だけで完結する点が特徴です。
緊急システムにも「備え」が必要という話
ここで見落とせないのが、この局所システムも材料なしでは動けないという点です。
見張りセンサーがスイッチを押しても、変換するもとになる材料(活性化される前のビタミンD)が血液中に十分ストックされていなければ、活性型を作ることはできないと考えられています。
いわば「スイッチがあっても、材料がなければ動かない」という状態です。
つまり、体の中にビタミンDのストックがあるかどうかが、この緊急システムがきちんと働けるかを左右すると考えられています。
ビタミンDは日常のちょっとした外出時間の中でも日光を浴びて少しずつ作られているといわれていますが、季節や個人差もあるため、食事などから補うことも助けになると考えられています。
なお、ビタミンDを増やす目的で長時間日光を浴びることは肌への負担にもつながりかねないため、おすすめできません。
ビタミンDの活性化を効率よく行うことが鍵になるかもしれません。

ただしこの仕組みも、暴走すれば炎症につながる可能性があります。
次回は、ビタミンDが免疫の「攻撃」と「鎮静」をどうバランスしているのか、その調節のしくみに迫っていきます。
第7回では、ビタミンDが担う免疫のバランス調整について解説します。
守る力は高めながら、過剰な炎症は抑えるという二重の役割や、敏感肌・アトピー性皮膚炎との関わりについても触れていく予定です。お楽しみに。
より専門的な内容にご関心のある方は、コラム「これから注目のバリアケア——ビタミンDと皮膚バリア機能の科学」もあわせてご覧ください。


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