前回まで、ビタミンDが肌の中でどんなふうに働いているのかを、いろいろな角度からお話ししてきました。
今回は、少し暮らしに近いお話です。
そもそもビタミンDは、どれくらいの日光を浴びれば作られるのでしょうか。
実はこの問いに、たった一つの正解はありません。
答えは季節・場所・肌質・年齢によって大きく変わるからです。
今回は「これだけ浴びれば安心」という数字探しではなく、自分に合った日光との付き合い方を考えるヒントを、やさしくご紹介します。

夏のお昼ならほんの十数分で足りることもあれば、冬はどれだけ浴びてもほとんど作られない時期もあります。
まずは「一律の正解はない」ということを知っておくのが、いちばんの近道かもしれません。
ビタミンDが作られる量は、季節・場所・肌質・年齢で大きく変わると考えられています。
・鍵をにぎるのは、日ざしに含まれるUVB(紫外線B波)の強さ
・夏のお昼なら短時間でも足りることがある一方、冬は日光だけでは作られにくい時期があると報告されています
・長く浴びても量は増えず、日焼けや光老化のリスクだけが上がると考えられています
・窓ガラス越しの日ざしではほとんど作られないことが知られています
鍵をにぎるのは「UVB」という紫外線
肌の中でビタミンDを作るスイッチを押すのは、日ざしに含まれるUVB(紫外線B波)という光です。
このUVBが肌に届くと、肌の中の材料がビタミンDのもとに変わっていくと考えられています。
ところが、このUVBはとてもデリケートで、届く量が条件によって大きく変わります。
太陽が高くのぼるお昼どきは強く、朝夕は弱い。夏は強く、冬は弱い。
赤道に近いほど強く、北や南に離れるほど弱くなります。
「日ざしを浴びる」といっても、UVBがしっかり届くかどうかは、時間帯や季節によってまるでちがう——ここが、ビタミンDと日光の話をややこしくしている、いちばんのポイントなのです。
「冬は作られにくい」という季節の壁
とくに知っておきたいのが、冬というシーズンの壁です。
太陽の位置が低くなる冬は、日ざしがななめに差しこむぶん、UVBが大気の中で吸収されやすくなります。
その結果、緯度の高い地域では、冬のあいだは日光を浴びてもビタミンDがほとんど作られない時期があることが報告されています。
海外の研究では、ボストン(日本でいえば東北〜北海道あたりの緯度)で、11月から2月ごろは屋外で日光を浴びてもビタミンDのもとがほとんど作られなかった、という有名な報告があります。
日本の多くの地域も、冬は日ざしだけでビタミンDを充分にまかなうのがむずかしくなると考えられています。
「冬もちゃんと外に出ているのに、なんだか調子が出ない」という感覚には、実はこうした季節の事情が関わっているのかもしれません。冬のあいだは、日光にこだわりすぎず、食事なども含めて全体で補う発想が現実的だといえそうです。
肌質・年齢・そして「浴びる面積」
同じ日ざしのもとにいても、作られる量には個人差があります。
肌の色が濃い(メラニンが多い)人は、UVBが肌の奥までとどきにくいぶん、色の薄い人より長い時間が必要になると考えられています。
また、年齢を重ねると、肌の中のビタミンDのもとになる材料そのものが減っていくため、若いころより作られにくくなると報告されています。
もう一つ大切なのが、日ざしにあたる肌の面積です。
顔と手だけを出しているのと、腕や脚まで出しているのとでは、作られる量が大きくちがってきます。
つまり「何分」だけでなく「どれだけの肌に浴びるか」も効いてくる、というわけです。
より身近にイメージできるよう、神戸を例にとってみましょう。
神戸は北緯およそ35度。よく晴れた夏のお昼どきに、腕なども出した状態であれば、十数分ほどでもビタミンDのもとが作られると考えられています。
春や秋は日ざしが弱まるぶん、もう少し長め——15〜30分ほどが目安とされています。
いっぽうで、太陽の位置が低くなる冬(12〜2月ごろ)は、日ざしだけでビタミンDを充分にまかなうのがむずかしくなると考えられています。
神戸のように本州の多くの地域が当てはまる緯度では、冬は「日光にがんばってもらう」よりも、食事や暮らしの工夫で全体を底上げする発想が現実的だといえそうです。
「長く浴びればいい」わけではない
ここで、意外に思われるかもしれない大切なことをお伝えします。
ビタミンDは、長く浴びれば浴びるほど増える、というものではありません。
実は肌には、作りすぎを防ぐしくみが備わっていて、一定量までいくと、それ以上UVBを浴びてもビタミンDのもとは増えず、別のかたちに変わっていくことが知られています。
ですから、長時間の日光浴には「ビタミンDがどんどん増える」というメリットはなく、日焼けや光老化、肌の負担といったリスクだけが積み重なっていくと考えられています。
敏感肌の方であればなおのこと、長く浴びることを目指す必要はありません。
目安としては、夏のよく晴れたお昼どきなら、腕なども出した状態で十数分ほど——それも毎日でなく、数日おきでよいとされています。
「短めに、こまめに」が、肌にもやさしい付き合い方といえるでしょう。
なお、窓ガラスはUVBの多くをさえぎるため、室内で日ざしを浴びてもビタミンDはほとんど作られないという点も、覚えておくと良いですね。

日焼け止めをきちんと使いながら、足りないぶんは食事や暮らしの工夫で補っていく。
そんなバランスのとり方が、これからの季節にも役立つはずですよ。
次回・第13回は、いよいよ最終回。
「スキンケアとビタミンD——成分選びの新しい視点」をお届けします。
ビタミンDに着目した化粧品には、実はいくつかの考え方(アプローチ)があります。
その違いと、肌悩みに合わせた選び方のヒントを、シリーズのまとめとしてやさしくご紹介する予定です。お楽しみに。
より詳しい専門的な解説をお読みになりたい方は、こちらの専門家コラムもあわせてご覧ください。
▶ 専門家コラム:ビタミンDと皮膚(監修コラム)


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