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VDR(ビタミンD受容体)——肌の“スイッチ”と加齢の話

ビタミンD受容体ー肌のスイッチと加齢の話皮膚科学

前回は、同じ“守り手”(LL-37)が、多すぎても・少なすぎても肌のゆらぎにつながるというお話をしました。今回は視点を少し変えて、ビタミンDのはたらきを肌が“受け取る”ための​「スイッチ」そのものに注目してみます。

このスイッチは「VDR(ビタミンD受容体)」と呼ばれています。

実はこのスイッチ、ビタミンDがいくらあっても​これが足りないと指令が届かないという、とても大切な役割をになっているのです。

エイジングケアの新しい視点として、やさしく紐解いていきましょう。

医学博士
医学博士
これまで何度も「ビタミンDが◯◯を促す」とお話ししてきましたが、その指令を肌の細胞が受け取るには“受け皿”が必要なんです。
それがVDR(ビタミンD受容体)。
どれだけビタミンDがあっても、この受け皿が少ないと、指令はうまく届かない。今回は、その受け皿の不思議に迫りますよ。
今回のポイント

ビタミンDのはたらきを肌が受け取るには、「VDR(ビタミンD受容体)」という受け皿が必要だと考えられています。

・VDRは、ビタミンDの指令を受け取って遺伝子のスイッチを入れる“鍵穴”のような役割をしていると考えられています

・ビタミンDは“活性型”に変わってはじめてこの鍵穴と結びつけると考えられています

・このVDRは年齢とともに減っていく傾向があり、これが肌のゆらぎの一因になると考えられています

ビタミンDの指令を受け取る“鍵穴”——VDRという受け皿

これまでの回で、ビタミンDが保湿のもとになるフィラグリンや、うるおいを守るセラミド、肌の守り手であるLL-37の産生に関わっているとお話ししてきました。

でも、ビタミンDがそうした指令を出すだけでは、実は何も始まりません。

その指令を​受け取る側の“鍵穴”が、肌の細胞に用意されている必要があるのです。

その鍵穴にあたるのがVDR(ビタミンD受容体)です。

ビタミンDという“鍵”がVDRという“鍵穴”にぴたりとはまると、細胞の中で遺伝子のスイッチが入り、「フィラグリンを作ろう」「セラミドを増やそう」といった指令がはじめて動きだすと考えられています。

VDRは、表皮のケラチノサイト(肌の主役の細胞)をはじめ、免疫にかかわる細胞など、肌のさまざまな場所に備わっていることが知られています。

つまり、ビタミンDの量だけでなく、それを受け取るVDRの多さもまた、肌のコンディションを左右する大事な要素だと考えられているのです。

しかも、鍵となるビタミンDは、そのままでは鍵穴にはまりません。

第6回でお話ししたように、一度​“活性型”に変わってはじめてVDRと結びつけると考えられています。

「活性型のビタミンD」と「それを受け取るVDR」、この両方がそろってはじめて、肌への指令が動きだすのですね。

VDRは、何のスイッチを入れているの?

では、ビタミンDと結びついたVDRは、肌の中でどんなスイッチを入れているのでしょうか。

実はこれまでのこのシリーズでお話ししてきた“うれしいはたらき”の多くが、このVDRを通じて動きだしていると考えられています。あらためて振り返ってみましょう。

ひとつは、うるおいのもとになる​フィラグリンづくり(第3回)

もうひとつは、肌の水分をとじこめる​セラミドづくり(第4回)

そして、3つめ、肌を守る“自前の守り手”である​抗菌ペプチド(LL-37)づくり(第5回)

これらはいずれも、活性型ビタミンDがVDRという鍵穴にはまることで、遺伝子のスイッチが入って進んでいくと報告されています。

VDRは、うるおい・バリア・肌の守り、その入り口に共通して立っている“大もとのスイッチ”——そんなふうにイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。

だからこそ、このスイッチの状態は、肌のコンディションにとってとても大切だと考えられているのです。

年齢とともに減る受け皿——エイジングケアの新しい視点

そしてもうひとつ、エイジングケアを考えるうえで見逃せないのが、この受け皿は​年齢とともに少しずつ減っていく傾向がある、という点です。

年齢を重ねた肌の細胞では、若い細胞にくらべてVDRが少なくなっていることが報告されています。

受け皿であるVDRが減るとどうなるか。

たとえビタミンDが足りていても、その指令を受け取る力が下がってしまい、うるおいを守るしくみや、肌を守るしくみが働きにくくなる可能性があると考えられています。

年齢とともに乾燥しやすくなったり、ゆらぎやすくなったりする背景には、ビタミンDそのものの不足だけでなく、こうした​「受け取る力の低下」も関わっているのかもしれません。

だからこそ大切にしたいのは、​ビタミンDがきちんと足り、必要なときに活性型へと変わるという“土台”を、日ごろから整えておくこと。

この土台があってこそ、数少なくなった受け皿も、そのぶんしっかり活かされてくると考えられています。

医学博士
医学博士
ビタミンDがきちんと足りて、必要なときに活性型へ変わり、それを受け皿(VDR)が受け取る——このリレーがそろってはじめて、肌への指令が届くんですね。
次回は、そのスイッチのはたらきを支える、肌の中の“もうひとりの主役”——カルシウムのお話です。
ビタミンDとカルシウムの、息の合った二人三脚に注目しますよ。
次回予告

次回・第11回は「カルシウムとビタミンD——肌の中の“見えない勾配”」。
実は肌の中には、カルシウムの濃さのグラデーションがあり、これが肌の生まれ変わりを静かに導いていると考えられています。
ビタミンDとカルシウムがどう支え合っているのか、やさしくご紹介する予定です。お楽しみに。

より詳しい専門的な解説をお読みになりたい方は、こちらの専門家コラムもあわせてご覧ください。
▶ 専門家コラム:ビタミンDと皮膚(監修コラム)

医学博士
医学博士
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