前回は、ビタミンDが免疫の「守る力は上げて、行きすぎは抑える」というバランスを整えている可能性についてご紹介しました。
今回はいよいよ、このシリーズがずっとテーマにしてきた敏感肌そのものと、ビタミンDのつながりに踏み込みます。
敏感肌は、実は“肌が薄い”だけの状態ではないと考えられています。物理的なバリア・神経の感じやすさ・免疫の調整という3つの要因から、やさしく紐解いていきましょう。

バリア・神経・免疫という3つの要因が歯車のようにかみ合って、はじめて“ゆらぎやすい肌”になると考えられています。
そしてビタミンDは、その3つすべてに関わっているという点で、とてもユニークな存在なんですよ。
敏感肌は、3つの要因が歯車のようにかみ合ってゆらいだ状態と考えられています。
・物理的なバリアのゆらぎ(うるおいが逃げやすい)
・神経の感じやすさのゆらぎ(刺激をキャッチしやすい)
・免疫の調整のゆらぎ(炎症が起きやすい)
ビタミンDは、この3つの要因すべてに働きかける可能性がある——という点が、これまでの保湿成分とは大きく異なる特徴だと考えられています。
要因① バリアのゆらぎ——うるおいが逃げやすい肌
敏感肌の土台にあるのが、1つめの要因である「物理的なバリアのゆらぎ」です。
これまでのお話でご紹介したとおり、肌のうるおいは、フィラグリン(うるおいのもとになるタンパク質)やセラミド(すきまを埋める脂質)によって支えられています。
これらが十分に足りていると、肌はしっとりと安定した状態を保ちやすいと考えられています。
ところが、この材料が不足するとバリアがゆらぎ、うるおいが逃げやすく、外からの刺激も入り込みやすくなります。
ビタミンDは、これまで見てきたように、フィラグリンやセラミドの材料づくりに関わっていると報告されており、バリアの土台を整える方向に働きかけると考えられています。
つまり敏感肌のケアは、まずこの1つめの要因を立て直すことから始まる、と言えそうです。
要因② 神経の感じやすさ——“刺激センサー”のゆらぎ
敏感肌ならではの「ピリピリ」「ほてり」「むずむず」といった感覚に関わるのが、2つめの要因です。
肌には、熱や酸などの刺激をキャッチするセンサーのような仕組み(TRPV1と呼ばれます)があることが知られています。
おもしろいことに、このセンサーは神経だけでなく、肌の細胞(ケラチノサイト)や免疫にかかわる細胞にも備わっていると報告されています。
バリアがゆらぐと、このセンサーが刺激をより感じ取りやすい状態になり、ちょっとしたことでも赤みやほてりとして感じられやすくなると考えられています。
そしてこの反応がさらにバリアを乱す——という悪循環につながることもあるようです。
ビタミンDは、バリアを整えたり炎症をしずめる方向にはたらくことで、この“感じやすさ”のゆらぎをやわらげる方向に間接的に関わる可能性があると考えられています。
要因③ 免疫のゆらぎ——炎症が起きやすい肌
3つめの要因は、前回くわしくお話しした「免疫の調整」のゆらぎです。
敏感肌では、ちょっとした刺激に対しても免疫が過敏に反応し、炎症が起きやすい状態になっていることがあると考えられています。
かゆみのもとになる物質を放出する細胞が過敏になっていたり、免疫のブレーキ役がうまくはたらいていなかったり、といった背景が関わっているとされています。
ビタミンDは、前回ご紹介したように、免疫の暴走にブレーキをかけ、炎症を伝える物質を抑える方向に働きかけると報告されています。
この3つめの要因を落ち着かせることも、ゆらぎにくい肌へ向かううえで大切なピースのひとつと考えられています。
こうして見てみると、敏感肌は「バリア」「神経」「免疫」という3つの要因が歯車のようにかみ合ってゆらいだ状態であり、ビタミンDはそのすべてに関わりうる、数少ない因子だと考えられています。
多くの保湿成分が1つめの要因に主に働きかけるのに対し、3つの要因に横断的に関わる可能性がある——ここに、ビタミンDが敏感肌ケアで注目されている理由があると言えそうです。

次回は、この“ゆらぎやすさ”とも関わりの深い、いくつかの肌の状態について、もう少し具体的にお話ししてみますね。
次回・第9回は「酒さ・脂漏性皮膚炎とビタミンD——意外な関係」。
同じ肌の“守り手”である抗菌ペプチド(LL-37)が関わりながら、正反対のかたちでトラブルにつながる2つの肌の状態を取り上げます。
ビタミンDとの関わりの違いを、やさしく紐解いていく予定です。お楽しみに。
より詳しい専門的な解説をお読みになりたい方は、こちらの専門家コラムもあわせてご覧ください。
▶ 専門家コラム:ビタミンDと皮膚(監修コラム)



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