
弱酸性の洗顔料がいいと聞くけれど、そこまで気にしたほうがいいんですか?
お客様から、こんなご質問をいただくことがあります。

結論からいうと、特に皮脂が少なく乾燥しやすい方、敏感肌の方、肌荒れをくり返しやすい方は、“弱酸性”を意識したほうがよいと考えています。
なぜなら、健康な肌の表面はもともと弱酸性に保たれており、その状態が肌のうるおい・バリア機能・常在菌のバランスを守るうえで不可欠だからです。
「弱酸性」という言葉は洗顔料のキャッチコピーとしておなじみですが、これは単なるイメージではありません。肌が本来持っている防御システムの一部であり、近年注目の「菌活スキンケア」にとっても、欠かせない土台です。
そこでこの記事では、「弱酸性」の必要性を分かりやすく解説し、日常のスキンケアで意識すべきポイントをご紹介します。

神戸大学 医学部 医学博士 取得。
敏感肌の研究を専門とし、皮膚のバリア修復に注目した新しいスキンケア理論を開発。
日本美容皮膚科学会、セラミド研究会などに所属。
そもそも「弱酸性の肌」とは?
私たちの肌の表面は、健康な状態ではpH約4.5〜5.5の弱酸性に保たれています。


弱酸性は「肌にやさしそうな雰囲気の言葉」ではなく、肌が健やかに機能するための環境条件そのものです。
肌を弱酸性に保っているのは「皮脂膜」
肌が弱酸性に保たれているのは、皮脂膜の働きによるものです。
皮脂膜とは、皮脂・汗・角質成分などが混ざり合って肌表面に形成される、ごく薄い天然の保護膜です。

皮脂というとベタつきやニキビのイメージがあるかもしれませんが、以下のような大切な役割を担っています。
実は、皮脂が弱酸性の源になるのは、皮脂成分が肌に常在する菌によって分解されて脂肪酸が生成されるためです。
つまり皮脂が少ない方や常在菌バランスが崩れている方は、酸性成分がうまく作られず、弱酸性の環境を維持しにくくなります。
ただし、肌に残った皮脂は酸化されやすく、酸化した皮脂(過酸化脂質)は肌荒れの原因になります。

そのため「皮脂を全部残す」のではなく、酸化した皮脂はしっかり洗顔で落とし、不足分は酸化しにくい油分で補うのが正解です。
肌がアルカリ性に傾くと、何が起きる?

肌表面のpHがアルカリ性に傾くと、さまざまな問題が連鎖的に起こります。
ここが今回もっとも伝えたいポイントです。
① 黄色ブドウ球菌が増殖しやすくなる

肌に常在する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、弱酸性の環境では増殖が抑えられています。しかしpHが上昇してアルカリ性に近づくと、この制御が外れて急激に増えやすくなります。
黄色ブドウ球菌が増えると、炎症を引き起こす毒素を産生し、バリア機能をさらに壊します。
アトピー性皮膚炎や敏感肌の悪化に、黄色ブドウ球菌の過剰増殖が深く関わっていることは、多くの研究で明らかにされています。
黄色ブドウ球菌と皮膚疾患のメカニズムを詳しく解説↓
≫ 「アクネ菌=悪者」はもう古い→菌活が美肌のカギ「マイクロバイオーム」を医学博士が徹底解説
② カリクレイン5(KLK5)が過剰に活性化される
カリクレイン5(KLK5)は、肌のターンオーバーを助けるタンパク質分解酵素です。弱酸性の環境ではその働きが適切にコントロールされていますが、pHが上昇すると過剰に活性化されます。
KLK5が過剰に働くと、肌のバリアタンパク質(フィラグリンなど)が必要以上に分解され、バリア機能が低下します。
さらにKLK5は、炎症ペプチド「LL-37」の産生を促す経路にも関わり、赤みや炎症・ヒリつきを引き起こしやすくします。これは酒さの発症メカニズムとも深く関係しています。

③ 常在菌バランス(マイクロバイオーム)が乱れる
健康な肌では、さまざまな微生物が弱酸性の環境のもとでバランスよく共存しています。
pHが乱れると、本来よい働きをしていた常在菌が機能しなくなり、逆に問題を起こしやすい菌が優勢になります。
この状態を「ディスバイオシス」と呼び、肌荒れ・ニキビ・赤み・ゆらぎ肌の背景にあると考えられています。
≫ ディスバイオシスとは:医学博士が教える【菌活】スキンケア!お肌の生態系(マイクロバイオーム)の整え方・NGケア3選
洗顔後、肌は一時的にアルカリ性に
石けん系洗顔料はアルカリ性のものが多く、使用後に肌がアルカリ性に傾くことがあります。
健康な肌には弱酸性に戻る回復力がありますが、乾燥肌・敏感肌・皮脂が少ない方は、この回復に時間がかかったり、十分に戻りきらないことがあります。
そこで、洗顔中、洗顔後、肌の「弱酸性」を守るケアが必要になります。
弱酸性を守る3ステップケア

特別なことは必要ありません。日々のケアを少し見直すだけです。

洗顔料の選び方
乾燥肌・敏感肌の方は、弱酸性で洗浄力が強すぎないものを選びましょう。
汚れは落としながらも、肌内部のうるおいバリア成分は残せる洗顔が理想です。

洗顔後に「キュキュッ」とさっぱりするほどの洗い上がりは、落としすぎのサインかもしれません。
洗顔後の保湿のポイント

洗顔後は皮脂膜が一時的に薄くなるため、早めに保湿しましょう。
油分の補給
皮脂が少ない方は保湿に加えて油分補給も意識しましょう。
ワセリンやスクワランは蒸発防止に役立ちますが、脂肪酸を含む植物油は弱酸性環境の維持にも役立ちます。(例:マカデミア種子油、シア脂等)

ただし、油分の種類や肌質との相性があるため、少量から試すことをおすすめします。
「菌活」の前に、まず弱酸性を守る!
菌活スキンケアというと、プロバイオティクス・プレバイオティクス成分を取り入れることに目が向きがちです。
しかし、どれだけよい成分を使っても、毎日の洗顔で皮脂を取りすぎていたり、肌がアルカリ性に傾きやすいケアを続けていたりすると、常在菌が住みやすい環境は保てません。
菌活スキンケアの基本は、良い菌を足す前に、菌が住みやすい肌環境を整えること。
そのために欠かせないのが、弱酸性の肌環境です。

弱酸性ケアは、菌活の”仕込み”です。

こうした方は、「何を足すか」よりも先に「弱酸性の肌環境を壊していないか」を見直してみてください。
よくある質問
Q1. 弱酸性の洗顔料でないとダメですか?

必ずしもすべての方に弱酸性の洗顔料が必要というわけではありません。
肌が丈夫で、洗顔後の乾燥やつっぱりを感じず、トラブルも少ない方であれば、今の洗顔料が合っている可能性があります。
ただし、乾燥肌・敏感肌・皮脂が少ない方・洗顔後につっぱりやすい方は、弱酸性で洗浄力が強すぎない洗顔料を選ぶことで、黄色ブドウ球菌の増殖やKLK5の過剰活性化を招きにくい肌環境を保ちやすくなります。

「洗顔後の肌の状態」を一つの判断基準にしてみてください。
Q2. 石けん洗顔は肌に悪いですか?

石けんがすべて悪いわけではありません。
ただし、石けんはアルカリ性のものが多く、洗浄力も高めです。肌が丈夫な方には合う場合もありますが、乾燥肌・敏感肌の方では、洗顔後のつっぱりや赤み・ヒリつきとして肌環境の乱れが出やすくなります。
石けんを使っていて肌の調子がよいなら、無理に変える必要はありません。

しかし洗顔後に不快感を感じる場合は、弱酸性の洗顔料に切り替えてみる価値があります。
Q3. 菌活スキンケアと弱酸性ケアは別物ですか?

別物ではなく、弱酸性ケアは菌活スキンケアの土台にあたります。
プロバイオティクスやプレバイオティクス発想の成分を取り入れることも大切ですが、肌表面のpHが乱れた状態では、常在菌がバランスよく共存できる環境が保てません。
菌活スキンケアを効果的に行うには、まず弱酸性の肌環境を壊さないことが前提です。

よい菌を「足す」前に、菌が「住みやすい環境を守る」こと——弱酸性ケアはその基盤です。
Q4. 弱酸性の化粧水を使えば肌のpHは整いますか?

弱酸性の化粧水を使うことは、洗顔後にアルカリ性に傾いた肌環境を早めに整える助けにはなります。ただし、それだけで根本的にpHが安定するわけではありません。
肌のpHを継続的に保つには、洗顔料の選び方・洗いすぎの防止・保湿・必要に応じた油分補給という日々のケア全体が重要です。
化粧水はあくまでケアの一部。

「弱酸性の化粧水を使っているから大丈夫」と洗顔を疎かにしてしまうと、本末転倒になることもあります。
弱酸性スキンケア:まとめ

弱酸性は「なんとなく肌にやさしそうな言葉」ではなく、肌の防御システムそのものです。


pH上昇による黄色ブドウ球菌の増殖やKLK5の過剰活性化は、バリア破壊・炎症・マイクロバイオームの乱れという連鎖につながります。
肌を守り、常在菌と共に育てるケアへ——その第一歩が、弱酸性を意識することです。

ご自身のスキンケアが、「弱酸性を守る3ステップケア」に沿っているかどうか、チェックしてみてください。



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