モイスチャーマトリックスUVが新発売になりました。
お客様から「日焼け止めはありませんか?」というご質問がとても多くありました。
何年も前から「日焼け止めは開発中です」とお答えしていました。
色々試行錯誤してきたのですが、なかなか納得のいくものができませんでした。
◇お肌にやさしい日焼け止めの条件
私が目指していたのは
①お肌にやさしく、敏感肌のかたでも使用できること
②セラミド配合でしっかりと保湿できるもの
③使用感が良いこと
④クレンジングが不要なこと
⑤SPFが30くらいでPAが+++。特にUVAのケアがしっかりできること。
これをクリアするのに随分苦労しました。
「お肌にやさしいこと」という条件は絶対なので
当初はノンケミカルでなければならないと考えていました。
(ケミカルとは紫外線吸収剤のことで、お肌への負担が大きく、
お肌に合わないというケースも比較的多いため
紫外線吸収剤を使用しないものが一般的にお肌にやさしいとされ、
ノンケミカルと呼ばれています)
◇ノンケミカルでやさしさを実現?
そのため酸化チタンと酸化亜鉛という紫外線散乱剤の紛体を使用して処方開発を行っていました。
酸化チタンと酸化亜鉛だけではSPFを30以上にするには
かなりの配合量になってしまいます。
紛体が多いとお肌に塗った時に粉っぽくなり、
カサカサとした感じが残ります。
また白うきしてしまい、見た目にも使用感もあまり良いものができませんでした。
紛体が多いとうまく分散させるために分散剤として油分や界面活性剤が
比較的多く必要となってきてしまいます。
私は、それでも紫外線散乱剤でつくるのがお肌にやさしいのか?
と、ふと疑問に思うこともありました。
白うきの問題はナノ粒子の酸化チタン、酸化亜鉛を使えばある程度解決できます。
しかし安全性に確証が得られないものを高配合することに躊躇してしまいます。
酸化チタン、酸化亜鉛のナノ粒子の安全性について
白黒がはっきりとしたわけではなく、確実な解決が得られたわけではありませんが
これまでの研究発表や調査結果をみると
ある程度細胞内に入るものの、通常は2次凝集してしまい、なかなか入っていかないこと。
表面をコーティング処理しているものは毒性が低いこと。
などが報告されています。
したがって私は20~100nm程度のコーティングされている酸化チタン、酸化亜鉛であれば
使用しても問題はないのではないかというふうに考えています。
しかし、たとえそう判断したとしても高濃度に使用するのはやはり躊躇します。
しかも粉っぽさや分散剤として油分や界面活性の配合量の多さも気になります。
そこで開発が頓挫していました。
◇ある紫外線吸収剤との出会い
そんな中、最近になって紫外線吸収剤をマイクロカプセルに封入したものが登場しました。
マイクロカプセルはシリコーン樹脂と加水分解シルクペプチドで構成されている安全性の高いもので
粒径は2マイクロメートルなので細胞内に取り込まれることもなく
またスクラブ剤のようにお肌に物理的な刺激を与えるほど大きくもなく
ちょうど良い大きさの粒子です。
水への分散性も非常に良好で分散剤や界面活性は特に必要ありません。
このカプセルの中に比較的紫外線吸収剤の中でもお肌への負担が少なく
安定性の良いものを選んで封入しています。
紫外線吸収剤をマイクロカプセルに封入しているため、
紫外線吸収剤が直接お肌に触れることがありません。
そのためお肌への刺激や負担がほとんどありません。
実際にそのマイクロカプセルを使用した臨床試験が報告されており
アトピーの患者さんや子供さんでも全く問題なく使用できています。
そのようなバックデータがしっかりとあることも安心の材料となり
あえての紫外線吸収剤(マイクロカプセル封入)を使用してみようと考えました。
◇セラミド美容液ベースの日焼け止めの開発へ
実際に0.2%セラミド配合のモイスチャーマトリックスIをベースに
若干の修正を加えながら、この紫外線吸収剤(マイクロカプセル封入)を配合して試作をしました。
すると、とんでもなく使用感が良かったのです。
しかしSPF30を達成させるには若干マイクロカプセルの濃度が高くなり
分散性に問題が発生してきました。
そこで、紫外線吸収剤(マイクロカプセル封入)の配合量を少しだけ減らして
その減らした分だけ紫外線散乱剤(酸化チタン、酸化亜鉛)で補うのはどうか、と考えました。
ここで補助的に使用するだけならコーティングされた20~100nm程度の
酸化チタン、酸化亜鉛を使用しても問題ないと思います。
分散剤としての油分や界面活性剤はほんの少量で済みます。
そして実際に試作をしてみると・・・!
マイクロカプセルだけのものより使用感がより良くなっています。
安定性も問題なさそうでした。
そこで原料メーカーさんに依頼してSPFアナライザーで測定してもらいました。
その結果、SPFは約30、PAは+++程度の紫外線防御能があることがわかりました。
正式に決められているSPFの測定方法ではないので
このSPF値とPA値を製品に付与して販売することはできませんが
おおよその目安として考えていただければと思います。
◇完成した日焼け止めの効果は?
試作品を数名の方にモニターしていただいたところ
ほとんどの方にとても気に入っていただけました。
私のもうすぐ1歳になる娘にも時々使用していますが
今までのところ特にお肌に異常はありません。
私自身も、この製品を塗って炎天下でサッカーをしたところ
塗っていないところでは真っ赤に日焼けしてしまったのですが
塗っていたところは全く日焼けしていませんでした。
ただし、わりとこまめに塗りなおしていましたので
皆様もできるだけ塗り直しをしていただけたらと思います。
この製品はウォータープルーフではありませんので
比較的汗などで落ちてくると思います。
他社製品に比べて落ちやすいというわけではありません(ふつうレベルです)。
石鹸や洗顔料で落とすことができるので
特別クレンジングは必要ありません。
その点もお肌への負担が少なくて良い点です。
ようやく長い年月がかかって
納得のいくサンスクリーン美容液が完成しました。
ぜひご興味のある方は使ってみてください。
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