「セラミド配合なら何でも潤う。」そう思っていませんか?
実は今、セラミド研究は激変しており、昔は7種類と言われていましたが、今はその数倍、数十倍の種類が見つかっています。
医学博士の視点から、最新のセラミド事情と共に、なぜお肌にセラミドが必要なのか、失敗しないスキンケア化粧品選びのキーワード「マルチセラミド」について解説します。

神戸大学 医学部 医学博士 取得。
敏感肌の研究を専門とし、皮膚のバリア修復に注目した新しいスキンケア理論を開発。
日本美容皮膚科学会、セラミド研究会などに所属。
セラミドは「ただの保湿成分」ではない!
セラミドはヒアルロン酸と同じ保湿成分?


セラミドって、ヒアルロン酸と同じ保湿成分ですよね?え、違うの?
「セラミド」という言葉が広く知られるようになって、人の肌にはセラミドが必要であることは多くの人が知っていることとなってきました。
しかし、なぜセラミドが大切なのかをちゃんと知っている人は、まだまだ少ないようです。

セラミドは、ヒアルロン酸や天然保湿因子のような、単なる保湿成分ではありません。
セラミドは保湿だけじゃない!「バリア機能」
「セラミドはバリア機能に重要な役割を果たしている」と知っている人は、かなりの通です。
そう、人の肌にはバリア機能というものが備わっていて、肌の水分の喪失を防ぐだけでなく、外部から異物の侵入を防ぐことによって防御機能の最前線を担っているのです。
そのバリア機能に欠かせないのが「セラミド」です。


肌の細胞を「レンガの壁」に例えると、セラミドはレンガ同士をつなぎ止める「セメント」。
乾燥しやすく、刺激を受けやすい敏感肌の方は、このセメント部分が弱いので、単なる保湿剤ではなく、セラミドを補うことが重要なのです。
保湿の基礎を学びたい方はこちら。

数字からアルファベットへ:セラミド進化論
セラミドにはどんな種類があるの?
人の肌には大きく分けると2種類のセラミドがあります。

ひとつは本来の純粋な「セラミド」というスフィンゴイド塩基と脂肪酸の結合した化合物で化粧品の業界では「ヒト型セラミド」などとも呼ばれています。
もうひとつはそのセラミドに糖が結合した「糖セラミド」です。
糖セラミドは純粋なセラミドが生合成される際に生じる前駆体になるのですが、バリア機能として働くのは主に純粋なセラミド(ヒト型セラミド)です。
この純粋なセラミド(ヒト型セラミド)にもたくさんの種類があります。
ヒト型セラミドの表記、今昔
昔:セラミド+数字
セラミドが発見された当時は、セラミド1、セラミド2のようにセラミド+数字で表記されており、セラミド6までが知られていました。
今:セラミド+アルファベット(構造に由来)
その後、次々と新たなセラミドが発見され、セラミド10やセラミド11などが知られるようになると、「セラミドNP」のように構造に由来した命名法に従って、セラミド+アルファベットで表記されるようになりました。
ヒト型セラミドは脅威の〇種類以上!?
昔:ヒト型セラミドは12種類
人の表皮の角質層のセラミドは非常に多様性に富んでおり、2008年のMasukawaらの論文では、3種類の脂肪酸と4種類のスフィンゴイド塩基との組み合わせで12種類のセラミドが報告されています。
脂肪酸 スフィンゴイド | ノンヒドロキシ脂肪酸 (N) | α-ヒドロキシ脂肪酸 (A) | エステル化ω-ヒドロキシ脂肪酸 (EO) |
| ジヒドロスフィンゴシン(DS) | NDS | ADS | EODS |
| スフィンゴシン(S) | NS | AS | EOS |
| フィトスフィンゴシン(P) | NP | AP | EOP |
| 6-ヒドロキシスフィンゴシン(H) | NH | AH | EOH |
図1 セラミドの種類と命名(Masukawaら,J Lipid Res, 49, 2008より改変)
今:ヒト型セラミドの種類は30種類以上
しかし、その後タンパク質結合型のセラミドやさらに多くの脂肪酸種とスフィンゴイド塩基との組み合わせが発見され、2020年のKawanaらの論文では、5種類の脂肪酸+タンパク質結合型脂肪酸と5種類のスフィンゴイド塩基との組み合わせで30種類のセラミドが報告されています。
脂肪酸 スフィンゴイド | ノンヒドロキシ (N) | α-ヒドロキシ (A) | β-ヒドロキシ (B) | ω-ヒドロキシ (O) | エステル化ω-水酸化 (EO) | タンパク質結合型 (PB-) |
| ジヒドロスフィンゴシン(DS) | NDS | ADS | BDS | ODS | EODS | PB-DS |
| スフィンゴシン(S) | NS | AS | BS | OS | EOS | PB-S |
| フィトスフィンゴシン(P) | NP | AP | BP | OP | EOP | PB-P |
| 6-ヒドロキシスフィンゴシン(H) | NH | AH | BH | OH | EOH | PB-H |
| 4,14-スフィンガジエン(SD) | NSD | ASD | BSD | OSD | EOSD | PB-SD |
図2 新しいセラミドの種類と命名(Suzukiら,J Lipid Res, 63, 2022より改変)
それ以外にも1-O-アシルセラミドが発見されるなど、分析機器や手法の発展によって、様々なマイナーな(微量に存在する)セラミドが発見されてきています。

こう進歩が速いと、もう「ヒトの皮膚には〇種類のセラミドが存在しています。」などと記述するのは無意味とも言えますね。
天然セラミドや、適切なセラミド濃度についてはこちらに!

化粧品選びのポイント「マルチセラミド」
化粧品に使用される(市販されている)ヒト型セラミドは、セラミドEOP、セラミドNG、セラミドNP、セラミドAG、セラミドAP、セラミドEOSなど人の皮膚の中ではメジャーな(含有量が多い)ものがありますが、まだマイナーな(微量にしか存在しない)セラミドが市販される気配はありません。
皮膚の中でメジャーに存在するそれらのセラミドをしっかり使用していれば、角質層のバリア機能の補完に十分役立つものと思います。
セラミドEOPやEOSのようなアシルセラミド(長鎖のセラミド)はバリア機能の安定化に非常に重要な役割を果たしていることが知られていますが、その他のセラミドの個々の役割についてはほとんど分かっていません。

しかしながら、人の他の組織と違って表皮にはものすごく多様なセラミドが存在しており、そのことは、角質層のバリアを守るためには、それだけの多様性が必要だったということなのかもしれません。
化粧品でバリア機能を補うときには、単独のセラミドを使用するより、多種類のセラミドを併用するほうがより効果的だと考えられます。

「マルチセラミド」(多種類のセラミドが配合されていること)が、セラミド化粧品選びのキーワードになるでしょう。
プロが教える「失敗しないセラミド化粧品」の選び方
1.ヒト型セラミドか?
糖セラミドではなく、ヒト型セラミドがおススメです。
2.マルチセラミドか?
1種類のセラミドだけのものより、多種類のセラミドのミックス(マルチセラミド)の方が、バリア機能の補完に効果的と考えられます。
3.セラミドEOPやEOSが入っているか?
セラミドEOPやEOSのようなアシルセラミド(長鎖のセラミド)は、バリア機能の安定化に非常に重要な役割を果たしていることが知られています。
4.ラメラ構造か?
ラメラ構造と呼ばれる、水分と脂質(セラミド等)がミルフィーユ状に重なった層状の構造を取っていないと、セラミドはそのバリア機能を十分に発揮できません。

ラメラ構造を取っているかどうか、完璧に調べられる方法はありませんが、参考になる方法はこちらでご説明しています。

5.黄金比率か?
バリア機能の回復には、セラミドの他、コレステロールと脂肪酸も一緒に配合しなければ効果が得られないと言われており、この3つの成分の最適な構成比率(細胞間脂質の実際の構成比)は黄金比率と呼ばれています。

こういった皮膚科学に基づいた配合をしていることは重要なポイントなので、商品説明に明記されているかもしれません。化粧品の成分表示だけでは、比率まではチェックすることはできませんが、コレステロールと脂肪酸も入っているかどうかを確認するのが良いでしょう。
どのような成分名で表示されているかは、次の記事を参考にしてください。
≫セラミドは保湿力が低い?ラメラ構造が大切な理由と見極めポイント
セラミド・アップデートまとめ+肌老化
2. マルチセラミドか?
3. セラミドEOPやEOSが入っているか?
4. ラメラ構造か?
5. 黄金比率か?
日々セラミドの研究は進化しており、化粧品に使われるセラミドも、今後変化していくことが予想されます。
最新の知見を取り入れて、賢くバリア機能を補いましょう。

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また、バリア機能の重要な要素、ということでよく知られているセラミドですが、実はバリア機能とは全く別の場所で、細胞内シグナル伝達物質として生理活性をもっているセラミドも存在しています。
それは、バリア機能のセラミドよりも、もっと短い脂肪酸鎖のセラミドなのですが…シワ・たるみなどの肌老化にお悩みの方はぜひご一読ください!

参考文献
Y. Suzuki et al., J Lipid Res, 49, 1466-1476, 2008
M. Rabionet et al., J Lipid Res, 54, 3312-3321, 2013
M. Kawana et al., J Lipid Res, 61, 884-895, 2020
M. Suzuki et al., J Lipid Res, 63, 100235, 2022
大野祐介, 木原章雄, 生化学, 96, 457-465, 2024
セラミド-基礎と応用-, セラミド研究会編, 食品化学新聞社, 2011
スキンケアを科学する, 宮地良樹ら編, 南江堂, 2008



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