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アゼライン酸~ニキビ・酒さ・脂漏性皮膚炎への効果:化粧品への配合技術~

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ニキビや酒さ、脂漏性皮膚炎などに効果があり、今大注目されている「アゼライン酸」。その作用や安全性、化粧品への最新の配合技術について、医学博士が詳しく解説します。

監修20年以上敏感肌を専門に研究し続け、シェルシュール商品の開発・製造を担当。医学博士。

アゼライン酸とは

アゼライン酸

アゼライン酸は、小麦やライ麦、大麦などの穀物や酵母に含まれている天然物由来の飽和ジカルボン酸です。

30年以上も前から海外ではニキビ治療に用いられています。

軽度~中程度のニキビ、非炎症性皮疹(面皰、コメド)や炎症性皮疹(丘疹、膿疱)など、広く使用されています。

催奇形性は見られず、遺伝毒性試験や耐性獲得試験は陰性で、とても安全性が高いと言われています。

アゼライン酸の5つの作用

アゼライン酸には、主に5つの作用があると言われています。

  • 抗菌性

アゼライン酸によりニキビの発症に関係しているP.acnesが減少し、低pH環境では抗菌性を発揮します。

  • 角化抑制

アゼライン酸により、角化細胞のトノフィラメントの数や厚み、ケラトヒアリン顆粒の数が減少するという報告があり、ケラチン前駆体の合成を抑制することで角化細胞の分化に影響を与えて角化を抑制すると考えられています。

  • 抗炎症性

アゼライン酸はUVBにより生じた炎症性サイトカインを減少させるなどの作用により抗炎症性を有することが報告されています。

  • 色素沈着抑制

チロシナーゼ活性阻害作用があり、炎症後色素沈着を抑制する効果も報告されています。

  • 皮脂分泌抑制

5αリダクターゼ活性を阻害して皮脂分泌を抑制する効果が報告されています。

ニキビとアゼライン酸

ニキビの原因とアゼライン酸の作用

ニキビの原因は様々ですが、その主なものとしては次の4つがあげられます。

  • 角化の異常

セラミドの不足などでバリア機能に異常が生じ、その結果角化の異常により毛穴が塞がってしまいます。

  • 皮脂の分泌の増加

男性ホルモンなどの影響で皮脂が多く分泌されます。また皮脂の組成にも異常が生じます。

  • アクネ菌の増殖

通常は皮膚の常在菌の一つですが、毛穴が塞がって酸素の少ない状態で、皮脂が多い状態であれば異常増殖します。

  • 炎症

菌の増殖によって炎症が生じます(赤ニキビ)。

アゼライン酸には抗菌性や角化抑制、抗炎症性、皮脂分泌抑制などの作用があるため、海外ではアゼライン酸はニキビの治療に用いらています。

アゼライン酸によるニキビの治療

日本では認可されていないので化粧品での使用となりますが、日本の皮膚科でもアゼライン酸クリームをすすめられることもあります。

※アゼライン酸は水に溶けないのでクリームへの配合が一般的です

ニキビの治療でクリームを使用するのは抵抗がありますが、効果としては同じくニキビ治療に用いらているトレチノインと同程度という報告もあるようです。

ごくまれに刺激(熱感、かゆみ、紅斑など)が見られることがありますが、時間の経過とともに軽快するようで、安全に使用できるものと考えられています。

比較的効果はゆっくりと表れるようなので、時間をかけて根気よく使用することが必要です。

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酒さとアゼライン酸

酒さとは

酒さは主に顔面の毛包・脂腺で生じる慢性の炎症状態です。

突発的に生じる火照り感と熱感、”flushing”と呼ばれる発作性の潮紅が特徴です。

酒さに似た症状は多く診断は難しいようです。

また有効な治療法も少なく、スキンケアの果たす役割も大きいと言われています。

酒さ4タイプとアゼライン酸

  • 紅斑・毛細血管拡張型

いわゆる赤ら顔や火照り症

  • 丘疹・膿疱型

皮膚面からの隆起、膿疱形成が著しいもの

  • 腫瘤・鼻瘤型

鼻瘤のように肉芽腫性の変化による立体的変化が主のもの

  • 眼型

結膜充血や眼瞼の肉芽腫性変化をともなう

海外では「丘疹・膿疱型」の酒さの治療のひとつとしてアゼライン酸が用いられています。

日本では「アゼライン酸」は薬として認可はされていないので、「治療」にはあたりませんが、「アゼライン酸」による効果が期待できる場合は「アゼライン酸配合の化粧品」を勧める皮膚科もあります。

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脂漏性皮膚炎とアゼライン酸

脂漏性皮膚炎とは

脂漏性皮膚炎は、いわゆる脂漏部位(皮脂分泌の過剰あるいは皮表皮脂の増加)にできやすい湿疹をいい、鱗屑と紅斑が主な症状です。

症状が現れるのは頭皮で2/3、顔面は1/2と言われています。

目につきやすい症状なので、ニキビ同様QOLの低下につながり、適切な治療とスキンケアが大切です。

脂漏性皮膚炎の原因とアゼライン酸

脂漏性皮膚炎の発症には、皮脂分泌機能の異常が関与しており、皮脂の様々な分解産物による刺激が皮膚炎を起こしていると考えられています。

またマラセチアという真菌の関与も重要視されており、マラセチアによる免疫活性化や接触アレルギー、皮脂の分解産物の刺激による皮膚炎、さらにIL-6やIL-8のような炎症性サイトカインの産生増加などが要因として考えられています。

脂漏性皮膚炎でのアゼライン酸の効果は直接的に明確なデータはあまりありませんが、アゼライン酸の抗炎症姓、抗菌性、皮脂分泌抑制などの作用を考えると、試してみる価値はあると考えます。

ただし、まれに刺激を生じる場合がありますので過敏な方には注意が必要です。

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美白とアゼライン酸

アゼライン酸の美白作用についてはほとんど着目されていませんが、アゼライン酸にはチロシナーゼ活性阻害作用があり、ニキビ跡などの炎症後の色素沈着を軽減してくれる働きがあります。

医学博士

アゼライン酸はまだあまり知られていませんが、上に述べて来た通り、ニキビや酒さ、脂漏性皮膚炎に有効な成分と考えられます。

刺激に注意する必要はありますが、これまでのスキンケアに満足していない方は、ひとつの選択肢になるかと思います。

そこで、アゼライン酸配合の化粧品について、概要をご紹介します。

 

アゼライン酸配合の化粧品

アゼライン酸化粧品にクリームが多い理由

アゼライン酸は水に溶けないので、クリームへの配合が一般的です。

水に無理やり溶かそうとしても、時間が経つとアゼライン酸が沈殿するなど、快適に使えない状態になってしまいます。

最近では「アゼライン酸の誘導体」や「シクロデキストリン」で水に溶けるように工夫されたものもでてきました。

「アゼライン酸誘導体」化粧水にも配合可能に

(案)アゼライン酸はニキビにも効果が期待できる成分ですが、油分たっぷりのクリームに配合されているのは使いにくいため、水に溶けやすい形のアゼライン酸が開発されています。

アゼライン酸誘導体は「アゼロイルジグリシンK」という成分名で、配合している化粧品が少しずつ増えています。

「シクロデキストリン包接」アゼライン酸化粧品の進化

アゼライン酸を「シクロデキストリン」に包接させた化粧品原料の登場により、美容液等にも配合できるようになった他、持続性や刺激にも改善が期待できるようになりました。

シクロデキストリンとは

シクロデキストリンというのは、環状オリゴ糖です。

内側が水に溶けにくい性質があるため、水に溶けにくい物質をはめ込むことで、その物質を水に溶かすことも可能になりました。

また、はめ込まれることで、不安定な分子でも分解されにくくなります。

シクロデキストリン包接による有効性の持続と低刺激性

シクロデキストリンにはめ込まれた(包接された)アゼライン酸は徐々に放出されるため、有効性が長続きします。

また、徐々に放出されることで、お肌の上で低濃度に保たれるので、遊離のアゼライン酸と比べて刺激も少ないのが特徴です。

 

シクロデキストリンの包接について、詳しい解説はこちらの記事をご覧ください。

▶ アゼライン酸のカプセル化で商品化が実現!3つの嬉しいメリット

 

医学博士

ニキビや酒さ、脂漏性皮膚炎等の治療に使われるアゼライン酸も、技術の進歩により、化粧品にも様々な形で配合できるようになりました。

日常のスキンケアに、低刺激なアゼライン酸配合の化粧品を取り入れてみられてはいかがでしょうか。

 


【参考文献】
①「皮膚科医のための香粧品入門」皮膚科の臨床 Vol.56, No.11, 2014 金原出版
②「敏感肌の診断」漆畑修 著 メディカルレビュー社
③”Studies on the efficacy and the tolerability of a new product: AZELAIC ACID 50% CYCLOSYSTEM COMPLEX ® ” IRA Instituto Ricerche Applicate (Italy)