グリセリンでニキビができると聞いたので、グリセリンフリーの化粧品を探しています。
そんなお問い合わせが増えたここ数年、シェルシュールでもグリセリンフリーの化粧品をご用意しています。
しかし、グリセリンフリーは本当に「ニキビ対策」に重要なのでしょうか?
医学博士の高岡(社長)が、行き過ぎたグリセリンフリー信仰に一石を投じます。
グリセリンでニキビができる?研究調査を読み解く
「グリセリンでニキビができる」という噂の発端は、ある製薬会社の研究が関係しています。
≫【研究調査】化粧品でアクネ菌が増える? ~保湿剤編~ | 株式会社サティス製薬
ニキビはお肌の常在菌であるアクネ菌の増殖が大きく影響していますが、保湿成分が「アクネ菌のえさ」になるかを、比較研究したものです。
そこでは14種類の保湿成分のうち、グリセリンが最もえさになる、という結果が出ていました。
そこから、このような解釈がネットで広まり…
→グリセリンをぬるとニキビが増える
グリセリンでニキビができる、という認識が広まったようです。
データは客観的事実ですが、その解釈について気になる3点を検証します。
検証1.グリセリンでアクネ菌は異常増殖するのか?
アクネ菌が異常に増殖することでニキビになります。
しかし、グリセリンを塗ったらアクネ菌が異常に増殖するかと言われると、そうではありません。
ニキビ発生の段階と共に、検証してみましょう。
ニキビの発生の第一段階
乾燥や、アクネ菌が皮脂を分解して作られた脂肪酸などが原因で、毛穴の出口がふさがります。
ニキビ発生の第二段階
アクネ菌が皮脂などを餌にして増殖し、炎症を引き起こします。
毛穴の出口がふさがって初めて、アクネ菌が異常増殖できる環境になります。
そこで考えて頂きたいのですが…
毛穴の出口がふさがっているのに、外から塗ったグリセリンが毛穴内にまで浸透して、アクネ菌の餌になるでしょうか?
アクネ菌は、主に毛穴内の皮脂を餌にして増殖します。
外から何塗っても誤差ですね。
検証1.結論
ニキビにつながる「アクネ菌の異常増殖」は、密閉された毛穴の中の皮脂をえさとして増殖しているもので、外から塗った成分の影響は非常に小さい、と、考えられる。
検証2.水溶性保湿成分の中での1位とは?
*写真はイメージです
比較された成分に注目する
ご存じの通り、アクネ菌は皮脂が大好きです。
でも、グリセリンがえさとして1位だって、データがありますよ!
はい、早とちり!
この実験は、14種類の水溶性の保湿成分の中だけで、アクネ菌の好物を調べたものです。油性の保湿成分と比較したなら、結果は違う可能性が高いです。
検証2.結論
あくまで「水溶性保湿剤」の中での一位がグリセリン。アクネ菌がもっと大好きなえさ(もっと避けるべき成分)は他にもある可能性も、十分にある。
また、化粧品は、グリセリン以外にも、水性・油性、その他沢山の成分が配合されています。
もしグリセリン配合の毛化粧品を塗ってニキビができたとしても、グリセリンが原因だとは断定できませんので、ご注意下さい。
検証3.お肌の常在菌はアクネ菌だけじゃない
お肌の常在菌はアクネ菌だけではなく、表皮ブドウ球菌も重要な菌です。
その表皮ブドウ球菌とアクネ菌のバランスも、ニキビにはとても大切です。
もしグリセリンが表皮ブドウ球菌のえさにもなるのであれば、菌全体が増え(というより健全に育つ)、バランスに変化はなく、ニキビにはならないということになります。
検証3.結論
グリセリンが表皮ブドウ球菌等、他の常在菌の餌になるかどうかも調べないと、「グリセリンでアクネ菌が異常に増える」とは言えません。
推測ですが、グリセリンは色々な菌にとって絶好の炭素源となりそうなので、たぶん表皮ブドウ球菌の餌にもなると思います。
補足.アクネ菌にはニキビを抑えるタイプも!
また、アクネ菌には美肌ケアをしてくれるタイプもあることが分かってきました。
その中には、抗炎症性成分の産生を促進するものもあれば、炎症を引き起こす物質の産生を促進するものもあります。
製薬会社の研究では、どのタイプのアクネ菌を使ったかまでは書かれていなかったので、それがニキビにつながるタイプのアクネ菌かどうかは分かりません。
グリセリンでニキビができる?検証の結論
グリセリンは確かに、ニキビの原因となるアクネ菌が好む成分だが、それは、アクネ菌の大好きな油脂などを含まない「水溶性保湿成分」の中において突出している、というデータに基づいた情報。
また、アクネ菌は、ニキビ初期の閉じられた毛穴の中で、そこにある皮脂をえさとして異常増殖するため、外から塗る成分の影響は少ない。
さらに、アクネ菌単体だけではなく、お肌の常在菌(表皮ブドウ球菌等)全体のバランスも、ニキビ発生には重要。
以上のことから、ニキビのためにグリセリンだけを避けても、効果は限定的である可能性が高いとDSRは考えます。
じゃあ、ニキビ予防にはどうしたらいいの?
ニキビ予防スキンケア・5つの重要ポイント
スキンケアでは、アクネ菌が大好物とする、油性の成分を避けることが大切です。
そして、忘れがちな保湿は、セラミドでしっかりと!
ニキビ予防スキンケア
さらに、食事、睡眠、寝具やメイク用具を洗うなど、生活環境を整えることも、ニキビ予防には重要です。
その上で、どうしてもニキビが減らないのであれば、グリセリンフリーも検討されたら良いと思います。
≫ これってグリセリン?成分名から「グリセリンフリー」化粧品を探したいなら必見
グリセリンが合わないかも…もし悩まれていたら、コスメコンシェルジュにLINEでご相談下さいね。
おまけ:開発者にとっての「グリセリンフリー」
じゃあ、DSRはなぜ「グリセリンフリー」の化粧品を作ったの?
グリセリンはとても強力な保湿剤で、さらに一緒に配合したヒアルロン酸の保湿効果を高めるなど、優秀な成分です。
しかし、ベタベタとした使用感は、私自身あまり好きではありませし、それを嫌がるお客様もいらっしゃいます。
そこで、他のベース成分で保湿力や安全性が高いものを配合し、グリセリンを抜きながら、保湿力をしっかりカバーしています。
しかも、ベース成として、抗菌力のある多価アルコールを使用することで、防腐剤も減らすことができ、敏感肌の方にも優しい処方となりました。
このように、化粧品は沢山の成分で成り立ち、一つの成分は、他の成分の使用量や、全体としての保湿力や使用感等に複雑に影響し合っています。
化粧品の中の1つの成分だけを意識するのではなく、1つの化粧品として、肌に合う合わないを判断して頂くことが、より良い化粧品選びに繋がると考えています。
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