レチノールについて、こんなウワサを聞いたことありませんか?
レチノールは紫外線に当たるとシミになるから、朝塗っちゃダメなの?
レチノール塗ると、日焼けするからやめた方がいいの?
実際にこういったご相談を頂くことがあって、これはレチノールの誤解を解かなくては!と思って。
今回は、シェルシュール商品の開発・製造を担当する、医学博士高岡(社長です)と、コスメコンシェルジュ中村が、その噂を徹底検証し、レチノールの正しい知識や効果的な使い方などをご説明して参ります。
<2023年11月>
これまでの噂の解説をアップデートし、以下2つ噂の検証を追加しました。
噂④レチノールを朝使ってはいけない
噂⑤パルミチン酸レチノール配合化粧品はSPF20程度の紫外線防御効果がある
ビタミンA「トレチノイン・レチノール」
よく混同されがちな2つのビタミンA「トレチノイン・レチノール」を、まずは簡単にご紹介しておきましょう。
トレチノイン(レチノイン酸の一種)
・ターンオーバー促進効果が強いが、それによって角質層を薄くするおそれがある。
・医薬品成分で、医療機関での取り扱いのみ。
レチノール(レチノール・レチノール誘導体)
・トレチノインと比べるとターンオーバー促進効果は穏やかで、ターンオーバーを整える。
・化粧品や薬用化粧品に配合できる。
ビタミンAの種類については、詳細はこちらの記事をご参考下さい。
噂①レチノールを日中塗ると日焼けしやすくなる?
答えはYES!
レチノールやレチノール誘導体を使用していると、紫外線への感受性が高くなることがありますので、シミができたり、日焼けしやすくなる可能性があります。紫外線対策は必須です。
じゃあやっぱり、朝塗らない方がいい?
朝レチノールを塗ると、その時だけすぐに紫外線への感受性が高くなる、ということではありません。
レチノールを継続使用するうちに、そういった変化が起こり得る、ということです。
ですから、特に「朝」塗らない方がいい、ということはなく、朝塗っても、夜塗っても、同じように紫外線対策をしっかりして頂くことが大切です。
抗酸化成分の朝塗り?夜塗り?問題は、こちらで詳しく解説しています。
噂②レチノールを塗って紫外線に当たるとシミになる?
レチノールが紫外線で分解され、シミになる?
答えはNO!
確かに「レチノール」は紫外線で分解されやすいですが、分解されたものが原因で、シミになることはありません。(後述しますが「レチノール誘導体」は分解されにくいです)
むしろ、紫外線のエネルギーを、肌の代わりに受け止めてくれる効果が、少し期待できます。
レチノールには光毒性がある?
答えはNO!
「光毒性」とは、それを塗ったところに、紫外線が当たるとシミや炎症などの皮膚トラブルが生じてしまうこと。
例えば、一部の柑橘類に含まれるベルガプテンやソラレンという成分は、光毒性があるため、その製油などを朝塗って紫外線を浴びるとシミができやすくなります。
レチノールやレチノール誘導体には「光毒性」はありません。
レチノールを塗ったら、シミが増えた?薄くなった?
答えは、場合によってYES!NO!
レチノールやレチノール誘導体は、「排泄タイプ」の美白成分として知られています。
・排泄タイプ←レチノール
・還元タイプ
シミの部分は、他の部分よりもターンオーバーが遅くなっていることが分かっています。
「排泄タイプ」は、メラニン色素を多く含んだ細胞(シミ)を早く垢として排泄することで、シミを薄くするという美白効果があります。
美白効果の6つのタイプ・対応した成分について知りたい方はこちら
≫6つの美白チャンスに効く美白成分リスト:美白化粧品が効かないワケ
レチノールを塗って紫外線対策をきちんとすれば
シミの排泄 > シミの増加
→シミが薄くなった♪ となる可能性があり、
レチノールを塗っても紫外線対策を怠れば
シミの排泄 < シミの増加
→ シミが増えた(涙) となる可能性があります。
紫外線を浴びてどんどん新しいシミが作られてしまうと、レチノールやレチノール誘導体の美白効果を感じられなかったり、日焼けをしたと感じたり、シミが増えたように感じてしまうんですね。
レチノールやレチノール誘導体の抗酸化力や美白効果を活かすためにも、紫外線対策をしっかりしておくことが大切です。
もちろん、レチノールを塗っていても、塗っていなくも、紫外線対策はスキンケアの基本のキ!
紫外線による光老化や発がんリスクを避けるためにも、紫外線対策はしっかり行ってくださいね!
噂③紫外線に当たるとレチノールは効果がなくなる?
化粧品に配合されているのが、「レチノール」か「レチノール誘導体(レチノールエステル)」かによって、その説明は変わります。
「レチノール」は紫外線で効果がなくなる?
答えはYES!
レチノールは不安定で、紫外線や熱によって分解や変質などしやすいです。ですので、紫外線に当たると効果がなくなっていくというのは正しいです。
純粋レチノールなどの名称でレチノールが配合されている化粧品が増えていますが、処方や容器などで紫外線などの影響がないように工夫されているようです。
「レチノール誘導体」は、紫外線で効果がなくなる?
答えはNO!
酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、リノール酸レチノールなどのレチノール誘導体は、紫外線に対して比較的安定で、分解されにくく、効果をかなり維持することができます。
実はお肌でも、レチノールは紫外線や熱に対して安定的な「パルミチン酸レチノール」としてストックされているんですよ。
現在販売されているレチノール化粧品の多くは、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノールといったレチノール誘導体が使われているかと思います。
不安な方は購入する前に成分を確認してみてくださいね。
なお、レチノールやレチノール誘導体配合の化粧品は、必ず直射日光が当たらない場所で保管し、できるだけ早めに使い切りましょう。
噂④レチノールを朝使ってはいけない?
こちらも、レチノールとレチノール誘導体とで、分けて考える必要があります。
レチノール:朝はおすすめしない
レチノールは噂③でご説明した通りかなり不安定なので、肌に塗って紫外線を浴びたときに変質する恐れがあるからです。
レチノール誘導体:朝使っても問題ない
レチノール誘導体は比較的安定しているため、日焼け止めやビタミンC誘導体などを併用すれば、神経質にならなくても良いのではないかと考えています。
レチノール誘導体も紫外線を浴びると有害物質になるという説もありますが、さまざまな文献を調べましたが、反論・賛成する決定的なデータがないため、今の時点では「正しいかもしれないし、正しくないかもしれない。」としか言えません。
シェルシュールではレチノール誘導体に関しては、原料メーカーの「紫外線や温度の影響は少ない」との見解から、紫外線対策をすれば朝の使用は問題ないと考えています。
なお、レチノールはビタミンCと併用することでさらに安定的になることから、ビタミンCを併用すると、さらによいと考えています。
噂⑤パルミチン酸レチノール配合化粧品はSPF20程度の紫外線防御効果がある
答えはNO!
濃度にもよりますが、日本製のほとんどのパルミチン酸レチノール化粧品には、SPF20の効果はないでしょう。
2003年Jouranal of Investigative Dermatologyに掲載された論文「2%のパルミチン酸レチノールを背部に外用すると、SPF20相当のサンスクリーンと同等の、UVBによる紅斑形成を抑制する」から、この噂が広まったようです。
今の日本の法律では論文と同じ濃度で配合することは可能ですが、その刺激性や不安定性から、紫外線吸収剤として効果が期待できるほど配合するのは、現実的には厳しいと考えます。
特にレチノールの刺激性を考えると、敏感肌化粧品の開発者としては、最高でも濃度0.1%の配合が限界と考えます。(ホームユースの場合)
その程度の配合では、
さてさて、弊社でもよくお問い合わせをいただいた噂を検証してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。
敏感肌でレチノールの刺激を気にされる方は、次の記事を。
レチノールの種類について気になった方は、次の記事を参考にして下さいね。
レチノールやレチノール誘導体について、よく分からないところなどがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
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